個人経営の居酒屋を開業する方法は?手順や繁盛させるコツも解説
居酒屋を開業するためには、出店する場所を吟味したり、資格や許可を得たりする必要があります。準備の流れだけでなく、繁盛させるための工夫を実践して、安定した経営を目指しましょう。
この記事では、個人経営で居酒屋を開くまでの流れ、繁盛させるためのコツを解説します。
個人経営で居酒屋を開店するまでの流れ

個人経営の居酒屋を開店するまでの過程では、事業計画書の作成や出店する立地の調査など、さまざまな準備をする必要があります。
準備から開店するまでの流れを、順を追って解説します。
事業計画書を作成する
事業計画書とは、事業を始めるにあたっての動機や目的、具体的なマーケティング戦略などを文章に落とし込んだ書類です。「どのように居酒屋を経営するのか」「どのような層を取り込む予定なのか」「どのように資金を用意するのか」など、詳細な計画を立てるときに役立ちます。
居酒屋を開店した後、顧客を確保して継続的に収益を得られないと、事業が頓挫してしまいます。開業資金や運転資金を加味したうえで、どのように来店者を獲得するのかを考えなければなりません。
事業計画書の作成を通じて、損益分岐点のラインや、持続可能な経営が見込めるのかを分析しましょう。開店当初の計画だけでなく、3年~5年後まで見据えて計画書を作成してみてください。
Web上で検索すると、無料で事業計画書のフォーマットがダウンロードできるサイトがいくつかあるため、調べてみてください。
また、日本政策金融公庫「国民生活事業」のページやJ-Net21「事業計画書の作成例」のページでは、事業計画書の記入例が掲載されているため、必要に応じて参考にするとよいでしょう。
居酒屋のコンセプトを決める
「居酒屋」と一口にいっても、さまざまな客層をターゲットにした店があります。たとえば、以下のようなコンセプトの居酒屋が考えられるため、自身がどのようなコンセプトの居酒屋を経営したいのかを決めましょう。
- 立ったままお酒を楽しむ立ち飲みスタイルの居酒屋
- リーズナブルに楽しめる大衆居酒屋
- 創作料理やオリジナルのお酒が楽しめる「創作居酒屋」
- 産地直送の海鮮・農産物を活かした「旬撰居酒屋」
- 昭和時代の雰囲気を再現した「昭和レトロ居酒屋」
- 国内外のクラフトビールを豊富に用意した「クラフトビール専門居酒屋」
- 1人飲み特化型の居酒屋
コンセプトを決める際には、自身が「このように経営したい」というイメージを基にするとよいでしょう。
出店する場所を決める
居酒屋のコンセプト次第で、出店する場所を決めましょう。たとえば、仕事帰りの会社員をメインのターゲットとする場合は、会社員の往来が盛んな場所が候補地となります。
「土日は家族連れも利用できる店にしたい」と考えている場合は、住宅街での開店も選択肢になります。安定的に集客して売上を得るためにも、メインのターゲットとなる客層が多く往来する場所を選定しましょう。
出店する場所の見当を付けたら、競合になりそうな居酒屋がどの程度あるのかを調査することも大切です。実際に入店して「繁盛しているのか」「どのような客層が来店しているのか」「どのようなメニューを用意しているのか」を調べてみてください。
候補地が複数ある場合は、実際に足を運んで雰囲気や人の往来を調査し、より適した場所に開店しましょう。
開業資金を用意する
居酒屋を開業する際には、契約するテナントや内装の希望によって金額は異なるものの、1,000万円近い開業資金が必要となるケースもあります。
なお、日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業資金の分布は以下の通りでした。
| 250万円未満 | 20.1% |
| 250万~500万円未満 | 21.0% |
| 500万~1,000万円未満 | 30.7% |
| 1,000万~2,000万円未満 | 18.8% |
| 2,000万円以上 | 9.4% |
自己資金だけで開業資金を用意できない場合は、融資を受けたり、助成金・補助金・支援金を申請したりして不足分をカバーする必要があります。また、実際に開店した後はランニングコストが発生することを見越して、余裕を持った資金計画を立てることも大切です。
同資料によると、開業時に苦労したことで最も多かった回答は「資金繰り、資金調達」で59.2%でした。融資を受ける場合は、金融機関の窓口で資金繰りに関する相談を受けましょう。
※出典:日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」
関連記事:居酒屋の開業に必要なものとは?開業資金と具体的な手順を解説
物件を契約する
居酒屋を出店する場所を決めたら、物件を確保しましょう。建物の状態や契約期間など、契約書の内容をきちんと確認したうえで、借家契約を締結します。
契約時には、権利金(礼金)・敷金・仲介手数料などを支払う必要があります。借りる物件や条件次第では、100万円以上のまとまった費用が発生するため、事前に用意しておきましょう。
以前に居酒屋として使用されていた物件であれば、内装やレイアウトの変更がほとんど不要となるケースが多いでしょう。自身の好みのデザインにしたい場合は、建物の骨組みだけを残した「スケルトン物件」が向いています。
ただし、スケルトン物件の場合は費用や時間がかかりやすく、退去するときに「入居前の状態に戻す原状回復義務」が設定されるのが一般的です。
開店準備をはじめる
出店する場所が決まったら、オープンに備えて準備を進めます。経営者として、具体的に行うべき準備は以下の通りです。
- 対象とする客層のイメージに合った内装にする(業者に工事を依頼する)
- 店舗ロゴ・ブランドイメージを作成する
- ホームページやSNSなどで店の情報を発信する
- 在庫管理の仕組みを考える
- コンセプトに合わせたメニューを開発する
- 従業員の採用と教育を進める
- 接客、調理、清掃などのマニュアルを作成する
- 清掃・衛生管理対策を考える
エリアによっては居酒屋の店舗数が多いため、数ある選択肢のなかから自店を選んでもらう必要があります。認知度を高めるために、グルメサイトに登録したりSNS運用をしたりして、店舗の情報を積極的に発信しましょう。
また、店舗の規模次第ではキッチンスタッフやホールスタッフが必要です。従業員を雇用する予定がある場合は、計画的に採用活動と教育を行いましょう。
仕入れ先を確保する
居酒屋で料理やドリンクを提供するには、材料を仕入れるルートを確保しなければなりません。
食材を仕入れる方法は、食品総合卸売業者や業務用仕入EC、近隣のスーパーマーケット、業務用スーパーで購入する方法があります。オーガニック食材にこだわる場合、農家と契約して直接仕入れる方法も1つの選択肢です。
「どのようなメニューを用意するのか」「どの程度の種類のドリンクを用意するのか」などを決めたうえで、適切な仕入れ先を決めましょう。
資格を取得する
居酒屋を経営する際には、以下の資格を取得する必要があります。
| 資格・許可 | 内容 | 取得までに必要な日数 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者(必須) | 食品衛生責任者を各店舗に1名以上配置することが義務付けられている | 1日の講習 |
| 飲食店営業許可(必須) | 飲食店を開業する際は、所轄の保健所へ営業許可申請を行う必要がある | 申請から2~3週間程度 |
| 防火管理者(必要な場合がある) | 客席数が30人以上ある店舗を開業する際は、防火管理者の選任が義務付けられている | 甲種は2日間の講習、乙種は1日間の講習 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 午前0時以降の夜間帯に酒類を提供する場合は、所轄の警察署の生活安全課へ深夜酒類提供飲食店営業の届出を行う必要がある | 営業開始日の10日前までに警察署に提出する |
上表のなかでも、飲食店営業許可は申請から2~3週間程度の時間がかかります。開店日を決めたら、逆算していつまでに許可申請をすればよいのかを把握しましょう。
居酒屋の経営者がやるべき仕事
以下で居酒屋の経営者がやるべき仕事を確認しましょう。
| ホール | ・来店客の案内 ・注文 ・料理の提供 ・会計 ・精算 ・席の片付けなど |
| キッチン | ・仕込み ・調理 ・盛り付けなど |
| 集客 | ・チラシ配布 ・ホームページやSNSの更新 ・キャンペーン企画の立案など |
| 事務全般 | ・在庫管理 ・メニュー開発 ・従業員の勤怠管理 ・売上の管理 ・経費の管理 ・衛生管理など |
従業員を雇用する場合は、いずれかの業務を任せられます。一方で、1人または身内だけで経営する場合、一連の業務をこなさなければなりません。
表に記載がある仕事の他にも、集客するための効果的な施策を考えて、実行するのも経営者の大切な仕事です。
個人経営の居酒屋を繁盛させるためのコツ

居酒屋を長く運営するためには、多くの顧客を確保する必要があります。居酒屋を繁盛させるコツや、効率よく利益を上げる方法などを見ていきましょう。
効果的な集客方法を実践する
居酒屋の経営は、実際に来店してもらわないと利益になりません。新規顧客を増やすためにも、効果的な集客方法や露出度を高める方法を考え、実践しましょう。
個人経営の居酒屋は、大手の居酒屋チェーン店と比較して知名度が低く、集客面で不利になりやすいデメリットがあります。自店の存在を知ってもらうためにも、チラシの作成やポスティング、SNSの活用やGoogle Mapへの掲載をするためにGoogleビジネスプロフィールの作成を検討してみてください。
新規顧客を獲得できたら、質の高いサービスを提供して満足度を高め、リピーターになってもらいましょう。
競合との差別化とブランディング
居酒屋は開店するまでのハードルが低く、競合が増えやすい業界でもあります。他店との差別化を図るためのコンセプト作りや、自店ならではの名物メニューやサービスを用意するとよいでしょう。
居酒屋に限った話ではありませんが、飲食店として生き残るために重要なポイントは「他店では得られない何か」を顧客に提供し続けることです。自店でなければ味わえない料理やサービスを開発し、ブランディングを進めましょう。
飲食店の需要を捉える
消費者が、居酒屋をどのような目的で利用しているのかを調査することも大切です。たとえば、最近では居酒屋やバーを1人または2人で利用するケースが増えています。
他にも、短時間で利用する人が増えており、「少人数・短時間」という需要が増えている傾向があります。
居酒屋の経営者は、市場調査やマーケティングを通じて、需要の変化を敏感に察知しなければなりません。繁盛している居酒屋があれば実際に来店して、「どのような客層から人気があるのか」を調査することも効果的です。
事業計画を綿密に立てる
「どのように集客・マーケティングをするか」「どのような資金計画を立てるか」「競合が増えたときにどう対処するか」など、事業計画を綿密に立てましょう。自店の価値を高めるための工夫や、運転資金を確保する手段の構築は、居酒屋の経営では欠かせません。
事業計画が曖昧だと、当初決めたコンセプトからズレが生じてしまったり、資金計画が甘くなったりする恐れがあります。売上が思うように伸びず、融資に頼った店舗運営になると、撤退を余儀なくされる事態になりかねません。
融資を受ける場合は毎月の返済が発生するため、集客の見込みや今後の展開、収支の想定を綿密に考えましょう。
幅広いキャッシュレス決済に対応する
クレジットカードや電子マネーなど、幅広いキャッシュレス決済を導入し、決済手段の多様化を図りましょう。キャッシュレス決済の普及に伴って、最小限の現金しか持ち歩かない、という人も増えています。
経済産業省が2024年に発表した「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」の資料によると、キャッシュレス決済比率は右肩上がりで上昇しており、2023年は39.3%でした。キャッシュレス決済のなかでも「クレジットカード」は83.5%と高く、次いでコード決済の8.6%、電子マネーの5.1%と続いています。
幅広いキャッシュレス決済を導入することで、利用者の利便性を高められます。特に、比率を見るとクレジットカードの比率が高いため、クレジットカード決済への対応は優先するべきといえるでしょう。
※出典:経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
デジタル機器を導入する
注文の利便性を高めたり、オペレーション不足を解消したりするために、デジタル機器の導入も検討しましょう。
飲食店を利用したとき、テーブルで注文するタブレットや自動配膳ロボットを見たことがある方もいるのではないでしょうか。デジタル機器を導入すれば、省人化と効率的なオペレーションを実現できます。
以下のようなデジタル機器やITサービスを活用して、業務効率化・省人化を図る方法があります。
- WEB予約システム
- セルフオーダーシステム
- 配膳、調理ロボット
これらの機器やサービスを導入すれば、電話対応やテーブルで注文を聞く手間を削減できます。
人手不足が原因で料理の提供が遅くなったり、サービスの質が悪かったりすると、せっかく来店した客をリピーターに取り込めない可能性が考えられるでしょう。将来的な機会損失を防ぐためにも、デジタル機器の導入は有意義な投資といえます。
個人経営ならではの居酒屋経営をして顧客を獲得しよう
個人経営で居酒屋を経営する場合、自身の考えや希望を反映させながら、自由に経営できるメリットがあります。
開店前に事業計画書を作成するなかで、立地・資金計画・競合調査などを綿密に行いましょう。
また、居酒屋のコンセプトを決めて、自店ならではの看板メニューや独自のサービスを提供すれば、新規顧客やリピーターを獲得できる可能性が高まります。
開店する前は、出店する場所の調査や開業資金の用意、仕入れ先の確保などの準備を計画的に進めましょう。
また、事業を始める際の資金を抑えるために、内装工事費や設備・備品費を節約できる「居抜き物件」を活用してみてはいかがでしょうか。
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