居抜き物件とは? 知らないと損する物件の特徴と物件サイトでの見分け方

飲食店、カフェ、美容室など店舗を新規で出店する際に重要なのが店舗探し。エリアや立地条件はもちろんですが、開業のための店舗工事や設備導入にどのくらいのコストがかかるかで、開業に向けた初期費用や、その後の経営にも影響します。できればなるべく初期費用を抑えたい、そう考えたときに心強い選択肢となるのが「居抜き物件(居抜き店舗)」です。そこで居抜き物件とはどんなものなのか、その特徴と居抜き物件を選ぶ際の注意点も合わせて見ていきましょう。

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居抜き物件は、前のテナントの設備・内装といった造作が残った物件

居抜き物件(居抜き店舗)とは、前の借主の内装や設備などの「造作」が残った状態の物件を言います。通常、退去する際には借りる前の状態に戻す「原状回復」を行い、「スケルトン」と呼ばれる、何もない状態に戻します。しかし飲食店や美容室などの場合、元の状態に戻すには費用がかかります。物件オーナーとしても造作をそのままにしておいたほうが早く入居者募集が可能となります。そこで最近では内装や設備といった造作をそのままの状態で退去し、次の借り手を探すケースが一般的になりつつあります。こうした物件が「居抜き物件(居抜き店舗)」と呼ばれています。

居抜き物件のメリットは、既存の内装や設備といった造作をそのまま使えること。たとえば、もともとカフェだった居抜きの店舗であれば、内装や厨房機器などをうまく活用すればすぐにでも同様のカフェがオープンできます。新規で出店する側にとっては、内装工事や厨房機器購入にかかる初期費用を抑えることができます。また工事や搬入などにかかる準備期間も短縮できるため、その分の家賃のコストダウンが見込めます。

内装や設備は「現状渡し」が基本。造作の状況や、希望にマッチしているか判断が必要

注意したいのは、内装や設備については多くの場合「現状渡し」が条件となること。「現状渡し」とは、いまある状態で譲渡するということで、たとえ壊れていたり不備があっても、物件オーナーは修理や補償を行わないというものです。この点が居抜き物件を借りる上での注意しなければいけないポイントです。

仮に残置されていた厨房機器が破損していた場合、修理費用や撤去費用が想定外にかかる場合もあります。また、前のテナントが長期間使用していた店舗の場合、給排水管などが傷んでいる場合もあります。借りる前に設備の状況を確認することが必須となります。

既存の内装や設備が本当に自分が開きたいお店にマッチしているか冷静に判断することも重要です。もちろん自分が開きたいお店のイメージに合致した内装・間取りで、かつ必要な設備が揃っている居抜き物件に出合える可能性はなかなかありません。ですが、一通り内装・設備が揃っている居抜きの店舗を内見すると、「希望には合っていないけれど、コストを抑えて出店できるなら妥協してしまおうかな…」と考えてしまいがちです。

もちろん計画やイメージを柔軟に見直すことは大切ですが、提供したいメニューや、実現したいお店の雰囲気といったこだわり、個性となる部分まで妥協してしまうと、自分のお店のコンセプトがずれてしまいます。また、特に飲食店などの場合は、間取りや広さによって座席数が変わります。売上は座席数に左右されるものでもあるので、冷静に判断する必要があります。

造作を使えるメリットで人気の居抜き物件。上手な探し方は?

では、居抜き物件を探したり、物件の良し悪しを見極めるにはどうしたら良いでしょうか。

まず物件を探すには、店舗賃貸物件に特化した不動産情報サイトをチェックすると効率がよいです。不動産情報サイトではエリア、広さ、家賃など希望の条件を設定して絞り込みます。その際、多くのサイトでは物件の状況を選ぶ項目で「居抜き」「居抜き店舗」が選択できるので、居抜き物件だけで絞り込んで探すことが可能です。

居抜き物件に残された造作は物件によってさまざまです。写真、間取図、備考欄などに造作に関しての情報がある場合は、おおよその造作について確認できます。しかし、実際の状態については現物で確かめなければわかりません。気になる物件については積極的に内見を行いましょう。

店舗物件探しは立地、広さなど物件に求める条件にばらつきがあります。その上、居抜きの場合は造作の状況も物件によって異なるため、自分の希望にぴったり合致した物件をすぐに見つけることは難しいでしょう。そこで物件の条件をある程度緩和した上で実際に見学し、比較検討することが重要です。商売は立地が命とも言われます。物件だけでなく、周辺エリアの商圏に関する情報や、近隣の店舗情報なども合わせて事前に確認しておくと良いでしょう。

その造作、使える?見学では状況を確認し、金額換算して比較

居抜き物件を内見する際は、設備や内装の状況を確認し、使えるもの、修繕が必要なもの、廃棄するものを見定めます。設備に関しては実際に水を出したり、通電させてみて、動作確認を行いたいところですが、空き物件の場合、電気、ガス、水道などが開通していない場合がほとんどです。設備の動作を確認したいのであればその旨を問い合わせ先の不動産会社に伝えておくと、水道や電気が使えるように準備してくれる場合があります。

不動産会社の担当者には造作の契約上の取り扱いについても確認する必要があります。たとえば設備などが比較的新しい場合、造作の譲渡が有料となる場合があります。造作の譲渡に関しては、有償・無償に関わらず造作譲渡契約を結ぶことで、造作が誰のものかを明確にできます。その際、譲渡が有償となる場合は不要なものを買取対象から除外してもらうことや、その分の譲渡額の値下げの交渉を行うことも検討すると良いでしょう。

その他、テーブル、椅子、棚なども、破損の有無や動作について確認しておきましょう。開業する店舗で使えるもの、修繕すれば使えそうなもの、使えないもの、新たに調達が必要なものを判断し、初期費用にどれだけ影響するかを金額換算すると事業計画が立てやすいです。内装業者と一緒に確認することで造作の状態の判断や、おおまかな工事費用を算出してくれる場合がありますので、もし可能であれば同行を依頼しましょう。

居抜き物件も選択肢に入れて、コストダウン&早期出店を実現しよう

居抜き物件(居抜き店舗)は、コストダウンや早期出店が期待できますが、物件の造作の状況や、自分のイメージする店舗にマッチするかを冷静に見極める必要があります。

条件の良い居抜き物件はすぐに次の入居者が決まってしまいます。店舗出店を考えはじめたら、なるべく早めに効率よくたくさんの情報を収集して、いい物件に出合ったときに的確に判断できるよう準備をしておきましょう。