お店を開くには何から始める?かかる期間や必要な費用、準備の流れを解説

お店を開くには、さまざまな準備を行う必要があります。事前に調査をしたうえで集客が見込める場所を選んだり、内装工事を進めたりして、自身がイメージしている店舗経営を目指しましょう。

安定的に利益を得て経営を軌道に乗せるためには、顧客を獲得しなければなりません。また、お店を維持するためのランニングコストが発生するため、資金計画を考えることも重要です。

この記事では、お店を開くために必要な準備について解説します。初期費用の目安も解説するため、お店を開こうと考えている方は参考にしてみてください。

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お店を開くときの10ステップ

お店を開くときは「どのようなコンセプトにするか」「どこに出店するか」「売上を得られそうか」などを考える必要があります。

実際に行うべき準備について、順を追って具体的に見ていきましょう。

1.お店のコンセプトを決める

想定している客層を踏まえて、お店のコンセプトを決めましょう。コンセプトによって、「どのような内装にするのか」「どのような雰囲気にするのか」が異なります。

たとえば、カフェを開業したい場合、「1人でも入りやすい落ち着いた雰囲気のカフェ」と「子ども連れでも来店できるカフェ」では、お店のメニューやレイアウト、デザインまで変わってくるでしょう。そのため、誰に何をどのように提供したいか、具体的に考える必要があります。

開業前にコンセプトをしっかり定めれば、事業計画にも一貫性を持てます。想定している客層に対して効果的にアプローチするためにも、ブレない軸を持ちましょう。

自身でお店を開いてオーナーとなる場合は、自身のこだわりを反映できる魅力があります。理想としているお店の経営をするためにも、コンセプト作りは大切です。

2.事業計画書を作成する

事業計画書とは、創業する動機や目的、資金計画などを自身の言葉で整理するための書類です。事業計画書を作成すれば、事業の方向性を見失うことを防ぐのに役立ちます。

お店を開いても、継続的に収益を得られないと事業が頓挫してしまいます。事業計画書を作成する過程では、採算が取れる売上高(損益分岐点)や資金調達方法などを考え、持続可能な店舗経営の実現に役立てましょう。

なお、金融機関から融資を受ける際に、事業計画書の提出を求められることがあります。事業の持続可能性や将来性をアピールするためにも、事業計画書は時間をかけて丁寧に作成しましょう。

Web上で検索すると、無料で事業計画書のフォーマットがダウンロードできるサイトがいくつかあるため、調べてみてください。

また、日本政策金融公庫「国民生活事業」のページやJ-Net21「事業計画書の作成例」のページでは、事業計画書の記入例が掲載されているため、必要に応じて参考にするとよいでしょう。

3.出店する場所を決める

一般的に、お店の経営が成功するかどうかは、立地の良し悪しが影響します。また、効果的に集客できるかどうかは、売れ行きに大きな影響を及ぼします。

たとえば、人通りが少ない通りでお店を開いても、よほど注目されない限り効率よく集客するのは難しいでしょう。人の往来次第で経営の成否は決まるため、立地選びは慎重に行う必要があります。

一般的に、集客しやすいと考えられる立地は以下の通りです。

  • ターゲット層や購買力の高い消費者が多い地域
  • 近くに大きな施設や駅、バスターミナル、車の通りの多い道路などがあり、集客が見込める地域
  • 競合となる店が少ない地域

お店を開く際は人の往来を綿密に調査し、立地を決めましょう。あわせて、競合になりそうなお店が近隣にあるかどうかも調べてみてください。

4.市場調査・マーケティングを行う

提供しようとしている商品やサービスが、市場から求められていなければ経営は失敗します。市場調査やマーケティングを通じて、どのような層からの受けがよいのか、自身が提供できる独自性や強みは何かを調査しましょう。

具体的に行うべき実地調査は、以下の通りです。

  • 地域の雰囲気を実際に歩いて確かめる
  • 時間帯や曜日などを変えて複数回実施する
  • 出店を予定している場所へのアクセスを確認する
  • 地域開発の動向を確認する

商品やサービスが、出店しようとしている立地でニーズがあるかどうかも重要です。ターゲットとなる層が、お店の存在に気付かなければ集客につながらないためです。

たとえば、カフェをビジネス街に出店する場合、テイクアウトサービスのニーズが見込まれるでしょう。住宅街に出店する場合、家族連れがくつろげる空間作りや長居できるメニューがあれば、リピーターの獲得につながるかもしれません。

5.お店を確保する

出店する場所を決めたら、物件を確保しましょう。建物の状態や権利関係、事業用で利用可能かどうかを確認したうえで、借家契約を締結します。

物件を借りる際は、契約時にオーナーへ権利金(礼金)・保証金(敷金)、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。

特に保証金(敷金)は居住用の物件と異なり、賃料の10~12カ月分が相場であり高額になる傾向があります。他にも、前家賃や保証会社利用料、申込金などの費用がかかることがあります。

物件によって初期費用は異なるため、複数の物件をピックアップし、見積もりを依頼することをおすすめします。物件の家賃だけでなく、さまざまな諸経費がかかり初期費用が高額になる場合もあるため、必要な資金を用意しておきましょう。

なお、契約後は家賃・共益費・光熱費などのランニングコストが発生します。毎月発生するランニングコストが払えないとお店の経営はできないため、きちんと資金計画を立てておきましょう。

また、開店準備を進めるために内装工事や従業員、仕入れなどの準備も必要です。やるべきことを整理し、計画的に準備を進めて、開店までのリードタイムを短縮しましょう。

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6.行政機関への届出や資格を取得する

お店の種類によっては、以下のように行政機関で許認可や資格を得る必要があります。

業種必要な許認可、資格
飲食業飲食店営業許可、食品衛生責任者
美容院美容所開設届、美容師免許
マッサージ店施術所開設届、あん摩マッサージ指圧師(施術をする場合)
リサイクルショップ古物商許可
ペットショップ第一種動物取扱業の登録、動物取扱責任者

業種によっては、届出や資格の取得を通じて、許認可を得なければ営業できません。都道府県庁・市役所・保健所・警察署などで手続きをする必要があるため、スムーズに経営を始めるためにも、計画的に許認可を得ておきましょう。

他にも、従業員を雇用する場合は労働基準監督署と公共職業安定所(ハローワーク)で労働保険の手続きが必要です。また、法人を設立したときは年金事務所で社会保険関係の手続きを忘れずに行いましょう。

7.開業形態を決める

開業形態としては、個人事業主としてお店を開く方法と、会社を設立して法人格としてお店を開く方法があります。

個人形態で個人事業主としてお店を運営する場合は、税務署へ「開業届」を提出する必要があります。

法人を設立する場合は、法務局へ「法人設立届出書」を提出する必要があり、個人形態よりもお店を始めるまでの労力・費用がかかります。

ただし、法人は、社会的な信用を得やすいメリットがあります。個人と法人のどちらがよいかは一概にいえないため、自身の事業計画に応じて決めましょう。

メリットデメリット
個人形態
・行政手続きの手間がかからない
・設立費用がかからない
・経理事務の負担が軽い
・信用力が劣る
・資金調達で不利になることがある
法人形態・社会的信用を得やすい
・節税の余地が大きい
・健康保険と厚生年金保険に加入できる
・資金調達で有利になることがある
・行政手続きの手間がかかる
・登記費用がかかる
・経理事務の負担が重い

8.内装工事を依頼する

開店日を決めたら、予定通りに開店できるように内装工事を進めます。内装工事をする際は、信頼できる設計・施工業者を選ぶことが大切です。

すでにお店のコンセプトを決めている段階であるため、対象とする客層のイメージに合った内装にしましょう。信頼できる施工業者に依頼するためにも、実際に業者が担当した物件を見たり、調査会社による信用調査を行ったりすることをおすすめします。

内装工事の費用を把握したい場合は、物件の内見段階から内装業者に同行してもらいましょう。概算の見積もりをもらったり、事前に内装工事のアイデアを相談したりすることも、スムーズに開店準備を進めるうえで効果的です。

内装や全体的な雰囲気だけでなく、店舗のレイアウト・商品陳列方法・照明などにも気を配り、顧客にとって快適な空間を意識してみてください。

9.商品・什器・備品を仕入れる

お店で販売するための仕入れ先を確保し、仕入れのペースや発注方法などを確認しましょう。仕入れ先の当てがない場合は、商工会議所や金融機関に相談したり、商品のメーカー・問屋組合に問い合わせたりする方法があります。

商品だけでなく、商品を陳列するための什器や各種備品も仕入れる必要があります。

10.集客をする

開店日が近付いてきたら、本格的に集客をします。チラシの作成とポスティングの手法もありますが、ホームページやSNSなど、インターネット上での宣伝も効果的です。

ホームページやSNSには、効率よく情報発信できる強みがあります。必要に応じてホームページの作成依頼や、SNSアカウントの運用代行なども検討するとよいでしょう。

昨今はインターネット上で情報収集をする人が多いため、Google ビジネス プロフィールの登録や地域ターゲティング広告(Google広告やFacebook広告など)の活用も効果的です。

必要に応じてMEO(Map Engine Optimization)対策を実施し、多くの人にお店の存在を知ってもらいましょう。

お店を開くまでにかかる期間

「開店するテナントが見つかるまでの期間はどの程度か」「内装工事が必要かどうか」などによって左右されるものの、準備を始めてから実際にお店をオープンするまでの期間として、一般的に半年~1年程度を見積もっておくとよいでしょう。

スムーズに居抜き物件が見つかったり、内装工事が不要だったりする場合は、3ヶ月程度で開業することも可能です。また、実店舗ではなくオンラインショップを開店する場合、比較的短い期間で開店できます。

いずれにしても、出店する日を決めたら、できるだけ早い段階で開店に向けた準備を進めると安心です。

関連記事:「居抜き物件のデメリットとは?メリットや物件を選ぶ際の注意点も解説

お店を開くときに必要な初期費用

日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、お店を開く際にかかった開業費用の分布は、以下の通りでした。

250万円未満20.1%
250万~500万円未満21.0%
500万~1,000万円未満30.7%
1,000万~2,000万円未満18.8%
2,000万円以上9.4%

(※)出典:日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」

なお、開業費用の平均値は985万円、中央値は580万円となっています。お店の種類や規模、開店する立地などによって異なるものの、おおまかに「1,000万円程度が初期費用として必要になる」というイメージを持っておくとよいでしょう。

お店を開いた後の資金計画と資金調達方法

お店を開くときには、初期にかかる開業費用だけでなく、当面の運転資金も確保しなければなりません。お店の経営を持続させるためにも、資金調達方法を考えることは大切です。

なお、資金調達の代表的な方法は以下の通りです。

  • 自己資金を用意する
  • 親族から借りる
  • 金融機関から借りる
  • 助成金・補助金を受ける
  • 出資を受ける(クラウドファンディング、ベンチャーキャピタルなど)

なお、日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、資金調達額の内訳は「金融機関等からの借り入れ」が平均780万円でした。平均調達額の65.2%を占めており、資金調達をするときに有力な手段といえるでしょう。

「自己資金」は平均293万円(同24.5%)であり、「金融機関等からの借り入れ」とあわせて全体の89.6%を占めています。計画的に自己資金を用意しつつも、不足する分に関しては金融機関から借り入れる、という店舗経営者が多いと考えられるでしょう。

※出典:日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」

関連記事「新たにお店を始めるときに必要となる資金と調達の方法。融資のポイント」

お店を開いた後に経営を成功させるコツ

お店を開いた後は、安定的に売上を得るための工夫が求められます。店舗経営者として、経営を成功させるために知っておくべきことを見ていきましょう。

資金管理を徹底する

お店の経営者として、キャッシュフローの管理は欠かせません。「いつ、いくら入金されるのか」「いつ、いくら支払う必要があるのか」という資金管理を徹底しましょう。

出金と入金のスケジュールを正確に把握すれば、支出を払えなくなる資金ショートを防げます。収支のバランスが崩れないように意識しつつ、予期せぬ出費に備えて予備資金を確保しましょう。

あわせて、いざというときに融資を受けられるように備えることも大切です。特に、好立地に店舗を構えるときや多くの従業員を雇用するときはランニングコストが重くなるため、資金管理の徹底は欠かせません。

サービスの質を向上させる

お店を開いた後に収益を安定させるためには、リピーターを獲得することが効果的です。

サービスの質を向上させて「また利用したい」と思ってもらえれば、顧客満足度が向上し、リピーターの獲得につながります。従業員の教育やオペレーションの最適化は常に意識し、来店してくれた人が満足できるように工夫しましょう。

営業・広報活動を継続する

開店当初の宣伝活動に加えて、開店後もホームページやSNSなどを通じて、継続的な情報発信を行いましょう。認知度を向上させると集客につながるため、営業活動の継続は欠かせません。

「自店でなければ生み出せない付加価値」を確立し、お店の独自性や強みを明確に打ち出したうえで、魅力を発信しましょう。

競合の把握と調査をする

自身が開店した後に競合が出店することもあるため、競合の把握と調査も継続して行う必要があります。競合に顧客を取られてしまうと、安定して収益が得られなくなり、店舗経営の継続が難しくなってしまいます。

同業他店が現れた場合は、サービス内容や価格戦略、プロモーション活動などを分析しましょう。競合分析を通じて、自店の強みを最大限に生かすための施策、差別化を図るための工夫は欠かせません。

お店を開くには事前に入念な準備が必要

顧客を獲得して安定した店舗経営を実現するためには、コンセプト決めや出店する立地の検討、市場調査・マーケティングなどが欠かせません。自身のお店がどのような強みを有しているのかを把握し、運営戦略をとるとよいでしょう。

お店を開くとき、準備段階から実際にお店を開くまで、1年程度の期間がかかることがあります。開業資金の調達もあわせて、計画的に準備を進めましょう。

お店を開くときに必要となる初期資金のおおまかな目安は、1,000万円程度です。開店後に発生する運転資金も加味したうえで、資金計画を丁寧に考えましょう。
また、事業を始める際の資金を抑えるために、内装工事費や設備・備品費を節約できる「居抜き物件」を活用してみてはいかがでしょうか。

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