飲食店の利益率を高める方法は?目安や計算方法を解説

飲食店を経営するとき、意識するべき数字が「利益率」です。利益率は効率よく利益を上げられているかどうかを調べられる指標であるため、経営者は正確に把握する必要があります。
利益率が高いほど、効率的な店舗経営ができていることを意味します。「収入を増やす」「経費を減らす」という2つのアプローチで、利益率を高めましょう。
この記事では、利益率の計算方法や飲食店で利益率を高める方法などを解説します。
飲食店の売上総利益率と売上高営業利益率

日本政策金融公庫の2024年8月に発表した「小企業の経営指標調査」によると、2023年度における一般飲食店の「売上高総利益率」は65.9%でした(黒字かつ自己資本プラス企業平均)。
売上高総利益率とは、販売している商品の利益率(マージン率)が高いかどうかを示す比率です。「売上総利益(売上高-売上原価)÷売上高×100」という計算式で求められ、売上高総利益率が高いほど、営業力が優れていることを意味します。
なお、同資料において一般飲食店の「売上高営業利益率」は5.0%でした。売上高営業利益率とは、売上高のうち営業利益が占める割合で「営業利益(売上高-売上原価-販売費及び一般管理費)÷売上高×100」で計算します。
売上高営業利益率では、販売費及び一般管理費を加味しているため、本業の事業活動による純粋な利益率を把握できます。数値が高いほど利益率が高い事業運営ができていることを意味するため、店舗経営者としては重視すべきデータです。
(※)出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」
飲食店の利益率の相場は?
経済産業省が2007年に発表した「商工業実態基本調査」によると、飲食業界全体における売上高営業利益率の平均は8.6%でした。
ただし、このデータはやや古いため、先に紹介した日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」をもとに、飲食店の形態別の利益率を見てみましょう(黒字かつ自己資本プラス企業平均)。
売上高総利益率 | 売上高営業利益率 | |
---|---|---|
食堂・レストラン | 65.6% | 4.9% |
日本料理店 | 63.3% | 6.1% |
西洋料理店 | 64.9% | 7.7% |
中華料理店 | 66.5% | 2.4% |
酒場・ビヤホール | 67.1% | 5.7% |
少人数で効率よく運営できれば、平均以上の売上高営業利益率を実現することも可能です。
※出典:経済産業省「商工業実態基本調査」
※出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」
利益率の種類と計算方法
前述した「売上高総利益率」と「売上高営業利益率」の他、「利益率」には以下のようにさまざまな種類があります。
利益率 | 特徴 | 計算方法 |
---|---|---|
売上高総利益率 | 売上に対する売上総利益(粗利益)の割合を示し、原価管理や価格設定の適正さを測る指標 | (売上総利益÷売上高)×100 |
売上高営業利益率 | 販売管理費や人件費などを考慮した利益率で、本業(営業活動)での収益性を示す指標 | (営業利益÷売上高)×100 |
売上高経常利益率 | 営業利益に営業外収益(利息・配当収入など)を加え、営業外費用(借入利息など)を引いた後の利益率。事業全体の収益性を判断する指標 | (経常利益÷売上高)×100 |
税引前当期純利益率 | 特別利益・特別損失を含めた利益率で、税引前の最終利益の割合を示す指標 | (税引前当期純利益÷売上高)×100 |
売上高当期純利益率 | 法人税などの税金を差し引いた後の利益率で、最終的に企業に残る利益の割合を示す。事業の最終的な収益性を判断する指標 | (当期純利益÷売上高)×100 |
前述の通り、売上高営業利益率は本業での儲けや営業効率を測るための指標のため、飲食店を経営する際は特に注目すべき数値です。
店舗の収益力を測るための指標でもあるので、できるだけ数値を高くするための方法を模索する必要があります。
飲食店は「FL比率」も意識しよう
飲食店経営において意識すべき数値の1つに「FL比率」があります。FL比率とは、売上に対する材料費(FOOD)と人件費(LABOR)の比率で、飲食業の適正な費用割合をつかむ基本的な指標です。
FL比率の計算式は「(材料費+人件費)÷売上高×100」です。飲食店を経営する際は、FL比率が60%以下を目指すとよいでしょう。
もし60%を超えると、材料費と人件費の負担が重いことを意味します。FL比率が超えた、または超えそうになったら、人材配置の適正化や仕入れ先の見直しなどを通じて改善を図りましょう。
飲食店の利益率に影響するコストの内訳
飲食店を経営する際に発生するコストは、以下の「固定費」と「変動費」に分けられます。
固定費 | ・テナントの賃料 ・人件費 ・水道光熱費 ・設備のリース料 ・保険料 ・通信費 ・機械のメンテナンス費 ・ソフトウェア使用料 |
変動費 | ・食材・飲料の費用 ・従量課金部分の水道光熱費 ・宣伝広告費 ・消耗品費 ・販売手数料など |
飲食店の経営においては、これらのコストバランスを適切に管理し、売上に対する各コストの比率を把握することが大切です。コストが高くなるほど利益率が低くなるため、支出のデータ分析を通じて、削れる支出をあぶり出しましょう。
特に、固定費の見直しに成功すると、その後もコストを削減できて利益率を高める効果が期待できます。もし利益率が低かったり、FL比率が高かったりする課題に直面したら、改善を図りましょう。
飲食店経営で利益率を高める方法
飲食店経営において利益率を高める方法は「収益を増やす」「コストを減らす」という2つのアプローチがあります。両方の取り組みを行い、利益率を高めましょう。

利益率が高いメニューを用意する
飲食店の収益を増やすためには、利益率が高いメニューを用意するのが効果的です。利益率が高いメニューとは、「原価が安いメニュー」ともいえます。
利益率が高いメニューを用意し、「当店おすすめ!」などと顧客にアピールすれば、注文数が増えるかもしれません。
なお、全てのメニューの利益率を高める必要はありません。来店者の関心を引くための看板メニューを用意したうえで、プラスアルファで原価率の低いサイドメニューを頼んでもらうのも効果的です。
回転率を高める
店舗の回転率を高めれば、多くの来店者を確保できて、注文数も増えます。その結果、収益の向上につながるため、効率よく来店者を回すための工夫も意識しましょう。
店舗側でできる対策としては、オペレーションの工夫が挙げられます。たとえば、1人や2人の客はテーブル席ではなくカウンター席に案内したり、料理を提供するスピードを早めたりする方法が考えられるでしょう。
他にも、注文時間を短縮するため、タブレット端末・QRコードを利用した、来店者自身が注文するシステムを導入する方法があります。このように、回転率を意識すれば顧客満足度を維持しつつ、利益率を高めることが可能です。
デリバリーやテイクアウトサービスを提供する
「店で食べたい」というニーズだけでなく、「家や職場で食べたい」というニーズに対応するために、デリバリーやテイクアウトサービスを導入するのも効果的です。
デリバリーやテイクアウトサービスの導入により、多くの利用者を確保でき、収入源を多角化できます。店の存在を認識してもらうきっかけになり、来店につながるメリットも期待できるでしょう。
ただし、デリバリーやテイクアウトサービスでは、できたての状態で食べられないデメリットがあります。冷めると美味しくない料理は向かないため、別途メニューの開発や工夫が必要になる可能性があります。
集客の工夫をする
普段の接客やオペレーションを意識してリピーターを作ることに加えて、新規顧客の獲得も欠かせません。飲食店は実際に注文してもらわないと収益につながらないため、集客の工夫は常に求められます。
たとえば、クーポンを付けたチラシのポスティングや、ポスターの掲示などが挙げられます。ほかにも、店舗ホームページの作成やグルメ系ポータルサイトへの掲載、Googleビジネスプロフィールへの登録なども考えられるでしょう。
昨今はSNSで飲食店のリサーチをする人もいるため、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを通じて、継続的に情報発信をすることも効果的です。さまざまな方法を試しながら、認知度を高めるための工夫をしましょう。
食材費・仕入れ費用を抑える
コストを抑えるために、食材の仕入れ先を見直す方法があります。現在よりも低コストで調達できる業者に変えれば、コストが減るため利益率が改善します。
仕入れ先を変更する以外にも、現在契約している業者と価格交渉する方法も1つの手段です。また、現在仕入れている食材のグレードが高く仕入れ費用がかさんでいる場合は、グレードを落とす方法もあります。
食べ残しが発生している場合、オーバーポーション(盛り過ぎ・作り過ぎ)が発生していると考えられます。食べ残しによる廃棄は、食材を無駄に仕入れていることと同じであるため、盛り付ける量の見直しも検討しましょう。
在庫管理を最適化する
期限切れで廃棄している食品がある場合、余計なコストが発生していることを意味します。正確な来店者数の予測は難しいものの、余計な仕入れを防ぐためにも、在庫管理を最適化することが大切です。
ただし、仕入れ量を減らしすぎると注文に対応できず、機会損失が発生してしまう可能性があります。過去の来店客数を分析し、最適な在庫管理の方法を考えましょう。
人件費の適正化を図る
従業員を雇用する場合、人件費の負担は避けられません。人件費は経営に影響を与える固定費である以上、抑える方法を考えましょう。
たとえば、人事生産性を向上させるために、必要な時間帯に必要な人数だけ稼働してもらう方法があります。来店客数を分析し、混みやすい曜日・時間帯を把握して、適切な人員配置を心がけるとよいでしょう。
補助金や助成金の活用も効果的です。たとえば、厚生労働省の「特定求職者雇用開発助成金」や「トライアル雇用助成金」などを活用すれば、高年齢者・障害者などを雇用したときや、トライアル期間を経て雇用した従業員がいるときに助成を受けられます。
人手が必要な時間帯だけ出勤してもらうために、アルバイト・パート従業員を雇用することも1つの手段です。
「人件費を抑えたいから」といって給与や時給を抑えると、従業員を確保できない、または確保できてもすぐに辞めてしまう可能性があります。その結果、オペレーションに支障をきたす可能性があるため、どのような待遇を用意するのか検討することも大切です。
※出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」
※出典:厚生労働省「トライアル雇用助成金」
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利益率を高める方法を実践しながら飲食店を経営しよう
飲食店を効率よく経営できているかを分析したり、長期的に安定して運営したりするためにも、利益率は必ず意識するべきです。利益率が高いほど店舗運営がうまくいっていることを意味するため、利益率を高める工夫を行いましょう。
「安くて美味しい料理を楽しんでもらいたい」という考えだけでは、飲食店の経営が持続不可能になりかねません。「FL比率」を60%以下に抑えるように意識し、原価が安いメニューを用意したり回転率を上げたりして、利益率を高めましょう。
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