美容室・理容室を開業するための段取り。物件探し、保健所の許可など

美容室や理容室で働いている美容師、理容師であれば、いつかは独立して自分のお店を持ちたいと思っているという方も多いのではないでしょうか。では、実際に開業するにはどんな準備が必要なのか、物件探し、保健所の許可申請、融資相談といった段取りを見ていきましょう。

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美容室・理容室を開くには資格が必要

美容業、理容業を行うには、それぞれ美容師、理容師の免許を持っていることが大前提です。開業を考えるのは有資格の方でしょうから、それぞれ自分の保有する資格に合わせて開業しましょう。

開業までのおおまかな段取りは以下のとおりです。

  • お店のコンセプトを決める
  • 店舗物件を決める
  • 内装工事・設備工事を行う
  • 保健所の営業許可を受ける
  • シャンプー、パーマ液など必要なものを揃える
  • 広告宣伝を行い集客する

では、ひとつずつ見ていきましょう。

まずはお店のコンセプトや営業スタイルを決めよう

美容室、理容室といってもさまざまなスタイルがあります。以前はなんとなく美容室は女性や若い人向け、理容室(=床屋)は男性向け、というイメージがありました。しかし最近では理容室もバーバースタイルの流行などで、様々なコンセプトを持つ店舗も増え、改めて注目を集めています。

美容室でも着付けが可能なお店や、ネイルサロンを併設しカラーやパーマの待ち時間にネイルを同時に施術するお店など、提供するサービスも様々です。フルサービスの理美容室だけでなく、カットのみのサロンも一般的になりました。また、ビジネスパーソンをターゲットに平日夜間に営業している理美容室や、高齢者向けに送迎サービスを行っている理美容室など、営業スタイルは多様です。

まずは自分のお店が提供するサービス、ターゲットとする客層、売りにする技術や施術内容など、コンセプトを決めましょう。特に腕に自信のある方ほど、どんなニーズにも応えられる万人向けのコンセプトを立てがちですが、数ある理美容室の中から選んでもらうには、なにかしらの特徴が必要です。

また、もし数人で美容室、理容室を営業する場合、管理美容師、管理理容師をおく必要があります。管理美容師、管理理容師になるには所定の講習を受ける必要があります。

コンセプトにあった店舗物件を決めよう

美容室、理容室の開業にあたって、店舗選びはとても重要です。特に立地の良し悪しはその後の集客に大きく影響します。また、美容室・理容室は水を大量に使用しますし、髪の毛、シャンプー、パーマ液などを排水するため、給排水設備の状況も確認しておきたいところです。

まず店舗の広さですが、施術のためのスペースとして各都道府県の条例で決められた広さを確保する必要があります。施術のスペース以外に受付や待合スペースなども確保しなければなりません。計画している店舗の構成を実現するために必要な広さを把握しておきましょう。

立地は駅周辺や大通沿いなど、なるべく多くの人の目につく場所が望ましいと考えられます。最近は外から店内の様子が見えるガラス張りの店舗も増えています。店舗が目立ったり、中が見えることで宣伝にもなります。またお客さんの交通手段に合わせて、駐車スペース、駐輪スペースなどの確保も条件に入れましょう。

物件探しは、店舗物件専門の不動産情報サイトを利用すると便利です。エリア、広さ、家賃などの条件で絞り込み、候補の物件を探します。その際、「居抜き物件」「居抜き店舗」も候補に入れると選択肢が広がるだけでなく、初期費用を抑えて開業できるかもしれません。

居抜き物件・居抜き店舗とは、前の入居者の内装や設備が残った状態で貸しに出ている物件のことを言います。特に美容室、理容室であれば、施術スペースと待合スペースが区切られていたり、鏡、シャンプー台、椅子などがそのまま残っていたりと、そのまますぐに開業できる状態の物件も少なくありません。内装工事や設備費用が安価で済むため初期費用を抑えることができ、人気の条件となっています。

ただし、居抜き物件・居抜き店舗の内装や設備は、仮に破損していても貸主が修理してくれるわけではなく、あくまでそのままの状態で貸しに出されるものですので、使えるものかどうか、もし修理や撤去する場合はいくらくらいかかるかを確認した上で判断する必要があります。

また美容室・理容室では、複数のシャンプー台を同時に利用しても給水の水圧に問題ないかどうか、髪の毛やシャンプーなどを流してもすぐに詰まらない排水力があるかも確かめておきたいところです。給排水管のパイプの太さや、給水のための加圧ポンプを導入する必要があるかどうかなどを確認しましょう。

物件を内見する際、美容室、理容室の店舗工事に詳しい内装業者と一緒に確認すると、こうした設備の確認や、内装設備工事のおおまかな費用を合わせて算出してもらえるため安心です。

内装工事・設備工事。工事の前に、保健所に事前確認しよう

物件が決まったら、いよいよ内装工事・設備工事に入ります。自分がオーナーの美容室、理容室ですから、内装にもこだわりたいところだと思います。またお客さんに好まれるようなオシャレで清潔感のあるお店にしたいものです。ただし、内装工事を行う上では、美容室、理容室として許可を受けるための建物の基準があるので、それに準拠した工事を行う必要があります。

美容室、理容室の構造設備等基準は一般的に、

  • 条例で定められた作業室の面積を確保する
  • 待合室は作業室と分ける
  • 清潔な状態を維持できる内装材料を用いる(床は不浸透性のものとする)
  • 必要な明るさが確保できる照明器具を設置する
  • 器具の消毒設備、消毒器具を備える
  • 消毒済みの器具を格納する容器を備える
  • フタ付きの毛髪箱、汚物箱を備える
  • 換気ができる構造・設備とする
  • 洗髪台を備える

といった項目が定められています。細かい条件は都道府県ごとに異なるので、開業予定の都道府県の基準を確認しておきましょう。

特にカットのみの美容室・理容室の場合、洗髪はせずに吸い取りで済ませる計画を立てるケースがありますが、必ず洗髪台を設けることが条例で定められている地域がありますので注意しましょう。

こうした基準に合致しているか、工事の前に事前に保健所に、設計図や設備一覧などを持ち込んで確認してもらうと、工事後に基準を満たしておらずに再度工事が必要になるといった手戻りがなく安心です。開業予定の都道府県の基準に詳しい内装業者に依頼するのもいいでしょう。

初期費用と運転資金は総額どのくらい必要?資金計画の立て方

店舗を借りて内装や設備工事を行い、必要な道具や消耗品を揃えて…と、開業にはまとまった資金が必要です。またオープンしてすぐにお客さんが安定してくるとも限りません。そこで半年〜1年はお客さんが見込みより少なくても運営できるだけの運転資金を用意しておくと安心です。

こうした初期費用は、自己資金に加えて金融機関からの融資を利用することが一般的です。金融機関から融資を受けるには事業計画書を作成した上で融資相談を行います。

事業計画書には、物件契約にかかる費用、おおまかな内装工事費用、設備費用、当初の消耗品などの仕入れ代金といった初期費用の内訳と、月毎にかかる家賃、水光熱費、通信費、人件費、消耗品費、借入金の返済費用などのランニングコスト、カット、パーマ、カラーなど商品ごとの売上見込みを盛り込み、収支を計算し、資料にまとめます。

特に売上見込みは、店舗の商圏の総人口や、属性別の人口、競合店の価格やお客さんの集客具合などを元に、1日の施術件数×1人あたりの単価×席数×営業日数を計算して出します。この数字の確からしさが融資を受けられるかどうかに影響します。客数や単価は、厳しく見積もった場合、普通に見積もった場合、甘く見積もった場合の3パターンを用意して、厳しく見積もった場合でも無理なく運営できるよう計画すると安心です。

シャンプー、カラー、パーマ液、理美容道具…。仕入れ先の専門店と契約しよう

美容室・理容室は、ハサミなどの道具のほかにも、シャンプー、カラー剤、パーマ液、整髪料など、消耗品も多く利用します。こうした道具や消耗品は、美容室・理容室や、美容師・理容師向けの専門販売店・専門問屋から仕入れるのが一般的です。

専門販売店・専門問屋から購入するには、会員登録が必要となります。登録には、美容師、理容師の資格免許や、美容室、理容室の営業許可証が必要になることが一般的です。取り扱っている商品や価格、送料などを比較して、どこから仕入れを行うかを決めましょう。

広告・宣伝は開業前から準備しよう

いよいよ開業が見えてきたら、お客さんをどのように集客するか、広告・宣伝の方法も考え始めましょう。地元のお客さんを獲得するには、折込チラシや地域情報誌などに広告を掲載したり、居住地域、性別、年齢で絞り込んだターゲットに宣伝できるネット広告なども検討するとよいでしょう。

また、無料で登録できる地図情報サイト、SNS、クチコミサイトなどに情報登録を行うのもおすすめです。最近は美容室・理容室もネット予約が一般的になってきました。美容室・理容室検索サービスを利用するには会員登録が必要となる場合が多いですが、その際、有料会員であれば契約によって検索の上位表示や、表示する写真点数の追加、顧客管理サービスの利用など、内容が異なります。顧客管理や予約管理の方法と合わせてどんなサービスを利用するか検討しておきましょう。

開業までのタスクを洗い出して、段取りよく進めよう

このように美容室の開業までにはさまざまなタスクがあります。店舗物件を契約するとそこから家賃などの費用が発生します。事前にやることを整理し、段取りよく準備を進めて、開店直後から繁盛店を目指しましょう。

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