エステサロンに資格は必要?開業資金とオープンまでの流れを解説
エステサロンは特別な資格もなく開業できるため、比較的参入しやすい事業です。近年は脱毛ブームの影響もあり、女性だけでなく男性でも利用する方が増え、ターゲット層にも変化が生じています。
しかし、エステサロンを開業するには専用の機器や備品を用意する必要があるため、初期費用や運転資金が高くなる傾向があります。そのため、しっかりとした収支シミュレーションを立てて始めることが重要です。そこで本記事ではエステサロンの特徴、開業の流れや必要な費用について解説します。
エステサロンを開業するのは簡単?
初めにエステサロン経営の市場規模やメリット・デメリットを解説します。
エステサロンとは
エステサロンとは痩身や脱毛など全身の美容術を提供するお店のことです。提供するサービスメニューとしては、スキンケア、プロポーションメイキング、リラクゼーションなどがあげられます。エステサロンを開業するには、これらのサービスを安全に提供する技術をもったスタッフを採用しなければなりません。
なお、エステの正式名称は「エステティック」、エステサロンも正式には「エステティックサロン」といいます。エステはよくマッサージや美容院、理容院などと混同されるケースがありますが、「日本標準産業分類」によると、エステティックとは「手技又は化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整える等の指導又は施術を行う事業所をいう」と定められていますので、開業する場合はその違いをよく理解しておくようにしましょう。
開業のメリットデメリット
エステサロンを開業するメリットとして、常に一定の需要が期待できることがあげられます。女性を中心に自分の外見を気にする方は今後も一定数いるはずですまた、個人経営のように小規模で経営する場合、比較的低コストで始められます。
一方、デメリットとしては、競争が激しいことがあげられます。資格を必要としないエステサロンは開業しやすく、気軽に参入できる分野なので、競合が非常に多い業種です。成功するためには競合にはないサービスを提供する工夫が必要になるでしょう。さらにエステティシャンは体を使う仕事であるうえ、近年では人手不足の問題もあり、肉体的な負担が大きくなる可能性が考えられます。
エステサロンの需要
自分の外見を良くしたいという欲求は多くの人が持っているため、エステサロンは常に一定の需要を見込めるでしょう。しかし、新型コロナウイルスの影響で売上減少に陥ったお店も多く、徐々に回復軌道に入ったものの、今後は人口減少の影響もあり、需要が減少していく可能性も考えられます。
そんななか近年は脱毛のブームがあり、女性だけでなく男性もエステサロンに通うケースが多く見受けられます。また、脱毛専門などエステサロンの中でも専門に特化したお店とすることで他のお店と差別化を図り、成功している例があります。
全体的な需要の低下は避けられないため、新しいニーズやターゲット層を掴むことが、この業種で成功するポイントといえるでしょう。
エステサロン開業に資格は必要?
エステサロン開業に資格は不要とされています。また、未経験でも開業可能ですが、まったく知識がない状態で営業するのは困難です。そのほか、必須ではないものの保有している有利な資格もあるので、事前に確認するようにしてください。
エステサロンに資格は不要
エステサロンに特別な資格は必要ないことは、あまり知られていないでしょう。よく比較される業種として、美容院、理容院、医療機関、鍼灸院などがありますが、これらの業種は資格や営業許可が必要とされているため、混同されがちです。
ただし、他のすべての事業と同じく、出店する際には税務署に「開業届」を提出する必要があります。開業届を提出すると、青色申告や会社用の銀行口座の開設など可能になります。
開業届は最寄りの税務署に持参するほか、郵送やオンライン上でも申請できるため、忘れずに手続きを済ませるようにしてください。
あると良い資格
エステサロンに必須の資格はありませんが、所有していると有利な民間資格はあります。特に以下の3つは認知度が高い資格なのでおすすめです。
- AJESTHE認定エステティシャン(日本エステティック協会)
- AEA認定エステティシャン(日本エステティック業協会)
- ビューティー・セラピー・ディプロマ(CIDESCO-NIPPON)
AJESTHE認定エステティシャンは、日本でもっとも古く大きい民間団体である「日本エステティック協会」が発行している資格です。エステ業界に限らず、美容業界でも信頼されている資格で、エステティック技術や知識の基礎があることを証明できる資格といえます。
さらに上位資格として「AJESTHE認定上級エステティシャン」「AJESTHE認定トータルエステティックアドバイザー」があります。
AEA認定エステティシャンは、日本エステティック業協会が認定する基礎資格で、こちらも歴史ある協会なので、AJESTHE認定エステティシャン同様、美容業界から厚い信頼が寄せられています。
エステティシャンとしての基本的な知識や技術、接客マナーが問われる内容で、こちらも上位資格として「AEA上級認定エステティシャン」「AEA認定インターナショナルエステティシャン」があります。
最後にビューティー・セラピー・ディプロマは、エステティックの教育機関として世界的に認められているCIDESCO(シデスコ)が認定する国際資格です。
ビューティー・セラピー・ディプロマを取得すると、国際的に高い水準のエステ技術・知識を持っている証明になるため、エステティシャンとして世界に羽ばたくことも可能です。
ただし、日本国内の資格よりも難易度が高いため、取得にはそれなりの時間を要するでしょう。
サービスメニューによっては資格が必要なケースもある
エステサロンは基本的に資格が不要な事業ですが、サービスメニューによっては資格が必要なケースもあります。特に以下に示すメニューを提供する場合は、施術者の資格が必須なので、よく覚えておきましょう。
サービスメニュー | 必要な資格 |
---|---|
まつ毛のエクステンション | 美容師 |
マッサージ | あん摩マッサージ指圧師 |
シェービング | 理容師 |
どのメニューも身近で行われることが多く、資格が不要と思ってしまいがちです。しかし、無資格で行った場合は罰則に問われる可能性もあるため、十分に注意するようにしてください。
なお上記の3種類は資格に加えて、店舗の場所や設備を知らせるための「美容所登録」や「施術所開設届」を保健所に提出する必要もあります。
エステサロンを開業する手順
実際にエステサロンを開業する手順を解説します。一般的なお店を開業するときの流れと大幅に異なる点はありませんが、美容やリラクゼーションや目的にしている関係上、外観や内装は特に綺麗な状態を保つことが大切です。
開業する物件を探す
初めに開業する場所と物件を探しましょう。立地条件は顧客が集まるかどうかに重要な影響を与えるため、慎重に検討するようにしてください。
物件を探す場合は不動産会社へ訪問して、希望条件などを伝えることから始めます。立地のほか、予算や店の規模など詳しく伝えられると良いでしょう。
人気エリアや人目につきやすい場所を選べば、集客の面では非常に有利に運びます。しかし、人気エリアは賃料が高くなりますので、予算や費用対効果などを総合的に考えて判断することが大切です。
内装をリフォームする
次に入居した部屋をエステサロン用にリフォームします。エステサロンに来店する方の多くは美容が目的ですが、同時に精神的な癒しを求めています。そのため、美しく落ち着きのある内装にすることが、顧客を満足させる重要なポイントといえます。
リフォームにかかる費用は一般的に300万~700万程度と考えられていますが、立地、面積、使用する建材、施工方法などによって大きな差が生じますので、ある程度余裕を見ておくようにしましょう。
なお、内装のリフォームは居抜きで入居する場合、工事費をかなり抑えられるため、低コストで開業したい方は居抜き物件を探すことをおすすめします。
備品や設備をそろえる
エステサロンを開業するには、専門的な設備や備品が必要です。例えば、エステ用ベッド、スチーマー、ホットキャビ、クールキャビ、ドレッサーといった基本的な備品に加え、美顔器、痩身機器、脱毛器などの専門機器があげられます。
何を用意するかはもちろん「どの程度のグレードのものを選ぶのか」「どの程度の個数必要なのか」は開業する店の方針、規模によって異なるので、適切なものをしっかりと把握することが大切です。
開業届を提出する
最後に開業に必要な事務手続きを行います。開業をするときには必ず税務署に開業届を提出しなければなりません。届出書はネット上で入手できるので、必要事項を記載して速やかに提出するようにしましょう。国税庁のホームページにある「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」にも書き方が掲載されているので、目を通しておくことをおすすめします。
なお、開業届は原則として開業から1ヶ月以内に提出するルールになっていますので、遅延することがないように注意してください。
エステサロン開業に必要な資金
エステサロン開業に必要な資金を5つ紹介します。特に備品や専用機器関係はどんなものを利用するかによって費用が大きく変わってくるので、慎重に検討することをおすすめします。
開業費・物件費
開業届の事務手数料はかかりませんので、事務手続きによる費用負担はなく、また自分の自宅でエステサロンを開業する場合は、家賃や敷金が発生しません。
一方、賃貸物件で開業する場合は、賃貸する物件取得費、入居工事費がかかります。新たに物件に入居する場合、敷金(保証金)や礼金が発生しますが、敷金は家賃の10ヶ月分、礼金は2ヶ月分程度が目安となっています。
また、内装や設備の導入に多くの費用がかかります。お店の規模や工事の内容にもよりますが、相場としては、数百万円以上かかることが多く、敷金や礼金を加えると1000万円程度必要な場合もあります。
なお、居抜き物件に入居する場合、入居による工事費がなくなるので大幅なコスト減になります。ただし、造作譲渡費の支払いが発生する点を理解しておくようにしてください。
備品
開業に必要な備品として、エステ用ベッド、スチーマー、ホットキャビ、クールキャビ、ドレッサーなどがあげられます。
金額としては、それぞれ2万~10万円程度を見込んでおくと良いでしょう。必要な個数は店の規模によって異なるので、事前にレイアウト図などを見ながらイメージしておくことをおすすめします。
トータルでのコストは数万円~30万円が相場と考えられます。
専用機器
美顔器、痩身機器、脱毛器、イオン導入機、吸引器、複合美顔器、ヒートマットなどがあげられます。このうち、痩身機器と脱毛器は数十万円以上、場合によっては100万円以上するため、導入する個数やグレードによって、トータルの開業費に大きな影響を与えるでしょう。また、専門機器はメンテナンスコストもかかる点を理解しておくようにしてください。
その他の設備は5万~10万円程度が相場となっており、トータルでのコストは数十万円~数百万円と考えられます。痩身機器と脱毛器などコストの高い設備を入れるかどうかによって大きな差が出る項目といえます。
消耗品
エステサロンで使用する消耗品としては、化粧品類、フェイスタオル、拭き取り用タオル、バスタオル、手鏡、コットン・ガーゼなどがあげられます。
数千円程度で購入可能ですが、消耗品のため日々使用することになります。毎月のランニングコストとして一定の金額を見込んでおく必要があります。
広告費
お店の宣伝広告費です。看板や折込チラシの掲載などがありますが、実施するには一定の費用がかかります。実施期間や掲載する媒体によりますが、数万円~200万円程度、見込んでおく必要があるでしょう。
また、近年ではネット上での広告が主流になっています。お店のホームページやブログによる集客、ツイッターやインスタグラムといったSNSの活用などが有効であり、この場合、費用も数万円程度で済みますので、ぜひ活用してみましょう。
エステサロン開業の注意点
エステサロンを開業するときの注意点を解説します。開業の流れが理解できた方も、開業を決断する前に今一度確認するようにしましょう。
開業届は1ヶ月以内
開業届は開業してから1ヶ月以内に提出しなければならないことが、所得税法第229条に定められています。ただし、未提出の場合でも遅れて提出した場合でも、罰則は設けられておりません。また、開業した日付は自分の判断で決められるため、あまり厳格な定めではないのが実態です。
しかし、開業届を提出しなければ青色申告ができないなど、開業によるメリットを受けられないため、できるだけ速やかに提出することをおすすめします。
初期費用・ランニングコストを計算する
入居にかかる初期費用や月々のランニングコストを事前に計算して、収支シミュレーションを立てるようにしましょう。初期費用は前述した通りですが、ランニングコストには毎月の家賃、水道光熱費、人件費のほか、専門機器のレンタルまたはリース費用、メンテナンス費用なども考慮しなければなりません。
専門機器に関するコストは導入する設備の種類や規模によって異なるため、購入する際によく確認しておくことをおすすめします。
サービスメニューによっては営業許可や資格が必要
エステサロンは基本的に営業許可や資格が不要な事業ですが、サービスメニューによっては必要な場合があります。例えばマッサージ治療効果を明記したマッサージを提供するには、国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」の資格が必須で、保健所へ開設届を提出する必要があります。
また、まつ毛のエクステンションや眉毛のカットなどのサービスを提供するには、美容師の免許が必要です。美容師の免許が必要なメニューを取り入れるには、施術者が美容師の有資格者でなければならず、マッサージと同じく保健所への開設届の提出が必要になることを覚えておきましょう。
まとめ
資格が不要なエステサロンは開業しやすい分、競合も多く、顧客を集めるための創意工夫がいっそう求められる事業といえるでしょう。
また、導入する設備やリフォームの手法によっては多額の初期費用が必要なので、居抜き物件への入居を検討しても良いでしょう。Tempodas(テンポダス)では未公開の店舗賃貸物件を効率的に検索できるツールを提供しております。多数の居抜き物件を手軽に検索できるため、これから開業することを考えている方にとって有益な情報が得られることでしょう。無料の会員登録を行えば、店舗物件や市場データの閲覧が可能になりますので、ぜひこの機会のご登録ください。