フランチャイズで個人事業主が開業するには?メリットやコツを紹介!
個人事業主として開業する際に、フランチャイズの制度を利用したいと考えている方もいるでしょう。そんな方のために、この記事ではフランチャイズで個人事業主が開業するメリット・デメリットや手順を解説します。
さらに、フランチャイズ開業における法人と個人事業主の違いや、個人事業主がフランチャイズで開業するコツも解説。フランチャイズで開業したいと考えている方は、ぜひご覧ください。
フランチャイズで個人事業主が開業するメリット
フランチャイズで個人事業主が開業するメリットは次の6つです。
- 知名度の高いブランドを利用できる
- 金融機関からの信用を得られやすい
- 集客支援を受けられる
- スケールメリットの恩恵を受けられる
- 備品や設備の提供を受けられる
- 運営のサポートを受けられる
それぞれの項目について、詳しく解説します。
知名度の高いブランドを利用できる
個人で開業した場合、知名度やブランド力を高めるには時間がかかります。しかし、フランチャイズであれば、すでに知名度が高まっているブランドの力を利用してビジネスをスタートすることが可能です。
一般的には、開業後すぐは集客に悩むことが多く、その後だんだんと知名度やブランド力が高まり、顧客が集まるようになってきます。しかしフランチャイズであれば、本部の看板が集客力を持っているため、開業後すぐに売上が見込めます。
金融機関からの信用を得られやすい
個人事業主の場合、開業資金の調達が難しい場合もあります。個人での開業の場合これまでの実績もなく、金融機関としても、本当に貸した資金を返済できるか判断しにくいためです。店舗を用意して開業するにはどうしても資金が必要ですが、金融機関から開業資金を借りられなければ、自分自身で開業に必要なだけの貯金を用意しなければなりません。
フランチャイズの場合、本部にブランド力があるため金融機関からの信用を得られやすい傾向があります。資金を調達しやすくなるため、個人でゼロからブランドを立ち上げる場合に比べると、開業しやすいといえます。
集客支援を受けられる
開業後、多くの人が悩むのが集客です。集客にはチラシやテレビCM、SNSなどさまざまな方法がありますが、どんな方法でも手間や費用がかかるため、通常業務を行いながら集客にも力を入れるのは難しい場合もあるでしょう。また、集客施策を行ってみても、効果が出ず赤字になってしまうこともあります。
フランチャイズの場合、本部がテレビCMを出したり、SNSの公式アカウントを運用したりして集客を行うことがあります。本部が集客施策を行えば、それぞれの個人事業主が集客に力を入れなくても、ある程度の顧客を集められるでしょう。
また、フランチャイズによっては、チラシやダイレクトメールなどの集客施策をサポートするシステムを用意している場合もあります。こちらも、さまざまな方法を個人で考えるより、費用も時間も短く済みます。ただし、各店舗から集客支援を依頼すると、有料になる可能性がある点は注意してください。
個人で開業したいけれど、集客できるか不安だと考えている人は、フランチャイズの利用を検討してみると良いでしょう。
スケールメリットの恩恵を受けられる
フランチャイズで開業すると、スケールメリットの恩恵を受けられます。スケールメリットとは、経営のさまざまな面で規模の大きな取り扱いを行うことによって、経営を効率化しコストを下げる方法のことです。
個人ではスケールメリットを受けられるような仕入れは難しいのですが、フランチャイズなら他店分と合わせて仕入れられるため、スケールメリットが効きます。同じ売上高であっても、安く仕入れができればより利益が大きくなります。
備品や設備の提供を受けられる
フランチャイズで開業した場合、備品や設備の提供を受けられる可能性があります。
開業したばかりの時には、店舗にとって適切な設備がわからず、時間が経ってから変更したくなることもあります。しかし、設備や什器を変更するには費用も時間もかかるため、簡単に変更できるものではありません。
本部にはさまざまな運営ノウハウがあるため、本部のアドバイスを受けながら設備を準備することで、後で変更したくなる可能性を下げられます。また、設備や什器の準備には費用がかかりますが、本部から提供を受けられれば開業の際に必要な費用を減らせる可能性があります。
運営のサポートを受けられる
フランチャイズを利用すると、店舗の運営に関してサポートを受けられる点もメリットです。
店舗を経営していると、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。自分の力だけで開業した場合、トラブル対応も自分1人で行わなければなりません。しかし、フランチャイズであれば、自分だけで解決が難しそうな場合、本部に相談できます。トラブルに関するマニュアルが充実しているケースも多いので、悩む時間を少なくできるでしょう。
また、日常的な運営をスムーズに行えるような仕組みを提供している本部もあります。
フランチャイズで個人事業主が開業するデメリット
上記のメリットを見るとフランチャイズでの開業は魅力的に見えるかもしれません。しかし、フランチャイズでの開業には次のようなデメリットもあります。
- ロイヤリティの支払いが発生する
- 違約金が発生する可能性がある
- 契約終了後も同業種での営業はできない
- 近所に同じチェーン店ができる可能性がある
- 独自の店舗運営が難しい
それぞれのデメリットについても詳しく解説します。
ロイヤリティの支払いが発生する
フランチャイズで開業した場合、ロイヤリティの支払いが発生します。ロイヤリティとは、ブランドの看板を利用して商売をしたり、さまざまなフランチャイズのサービスを利用したりする料金として支払う費用のこと。ロイヤリティの金額は、売上や利益に応じて決まる場合もあれば、毎月定額で決まっている場合もあります。
売上が想定より低い場合でも、ロイヤリティは支払わなければなりません。特に個人事業主にとっては、ロイヤリティの負担が大きいと感じられることも多いでしょう。事前にロイヤリティの割合や金額を確認し、納得できるフランチャイズ契約を結ぶ必要があります。
違約金が発生する可能性がある
フランチャイズ契約では、多くの場合契約期間が決まっています。契約を途中で終了すると、多額の違約金が発生する可能性があります。
個人事業主の場合、例えば体調不良が理由で店舗の経営を続けられなくなった場合でも、違約金を支払わなければなりません。万が一の際には運営を誰かに引き継げるようにしておくか、違約金を支払えるだけの準備をしておくと安心です。
契約終了後も同業種での営業はできない
フランチャイズで開業すると、契約終了後も同業種での営業はできない契約となっている場合がほとんどです。これを「競合避止義務」と呼びます。
つまり、一定期間はフランチャイズで開業してノウハウを学び、その後フランチャイズ契約を解除して自分の店を持つというのは、不可能だと考えた方が良いでしょう。将来自分の店を持ちたいと考えている場合は特に、競合避止義務に注意する必要があります。
近所に同じチェーン店ができる可能性がある
契約内容によっては、近所に同じチェーン店ができてしまう可能性があります。
近くに同じ店舗ができると、客足が分散し、売上が減ってしまうリスクがあります。事前に契約内容をきちんと確認し、近所に競合店舗ができる可能性があるのかを把握しておかなければなりません。
独自の店舗運営が難しい
フランチャイズでは、独自の店舗経営が難しい点もデメリットとなります。
開業したら、どんな風に店を運営したいか考えている方もいるでしょう。しかし、フランチャイズでは、取引先や販売方法、プロモーションなど、さまざまな面で本部が決めた制限があります。個人事業主として開業したといっても、他社の看板を背負って商売をする以上、自分の好みに合わせた運営はできません。
フランチャイズは、自分の理想の店舗を運営したい人には向かない方法だと言えます。
フランチャイズで個人事業主が開業する手順
フランチャイズで個人事業主が開業する手順は次の通りです。
- 業種や業態・会社を決める
- フランチャイズ会社に関する情報収集を行う
- フランチャイズ契約を締結する
- 事業開始の準備をする
各手順の詳しい内容を解説します。
業種や業態・会社を決める
まずは、フランチャイズの業種や業態・会社を選びましょう。
フランチャイズは、さまざまな業種で取り入れられている手法です。また、同じ業種であっても、複数の会社がフランチャイズを行っています。その中から、自分で運営したいと思えるものを選びます。
業種や会社を選ぶ際には、まず第一に営業を続けられるか考えなければなりません。できれば、自分が好きな業種を選べると良いでしょう。さらに、ロイヤリティの金額・割合や本部のサポートなどを調査して決定します。
フランチャイズ会社に関する情報収集を行う
いくつか契約先の候補を絞り込んだら、次は会社に関するさらに詳しい情報収集を行います。情報収集には、次のような方法があります。
- 問い合わせ
- 説明会への参加
- 資料請求
こうした方法で情報収集をした結果、ある程度加盟の意思が固まったら、フランチャイズの担当者と打ち合わせをしましょう。
フランチャイズ契約を締結する
打ち合わせの結果、フランチャイズで開業したいと思えたら、フランチャイズ契約を締結します。フランチャイズ契約の際に必要な手続きは会社ごとに異なりますが、多くの場合次の2つの手続きが必要です。
- 契約書の作成
- 初期費用の支払い
初期費用をすぐに支払わなければならない場合には、あらかじめどの程度の金額が必要になるのか、確認しておきましょう。
事業開始の準備をする
フランチャイズ契約を締結したら、事業開始の準備をします。細かい部分は業種によって異なりますが、主に次のような準備が必要です。
- 店舗の物件調達
- 什器の準備
- スタッフ募集
- 開業に向けた宣伝
- 必要な許可や資格の取得
こうした準備にも時間がかかります。開業のためにどの程度の準備期間が必要か不安に感じるのであれば、フランチャイズの本部に標準の準備期間を問い合わせてみるのも良いでしょう。
すべての準備が整ったら、開店日を決めてオープンします。
フランチャイズで個人事業主が開業する際に必要な手続きと費用
フランチャイズで個人事業主が開業する際には、次のような手続きや費用が必要です。
- 開業届の提出
- 初期費用
- 確定申告
それぞれ、詳しく解説します。
開業届の提出
フランチャイズで個人事業を開業する場合でも、通常の個人事業と同様に開業届の提出が必要です。開業届は税務署の窓口または国税庁のHPで入手できます。
提出方法は、次の3つです。
- 税務署に持参
- 郵送
- e-tax
開業届の提出に費用はかかりません。郵送する場合のみ、郵送費用が必要です。
初期費用
フランチャイズで個人事業主が開業する場合、初期費用が必要となります。必要な初期費用は業種によって異なりますが、主に次のような項目で費用が発生します。
- 加盟金
- 保証金
- 物件取得費
- 内装・外装工事費
- 広告宣伝費
- 研修費
どの項目にどれだけの費用がかかるのか、不要な場合は支払いを避けられるのかなど、気になる点があれば事前の打ち合わせで確認しておくと安心です。
確定申告
フランチャイズでも個人事業主となるため1年に1回確定申告が必要です。実際に確定申告を行うのは1年に1回ですが、直前になって慌てることがないよう、日々経理の情報を記録しておきましょう。
フランチャイズにおける個人事業主と法人の違い
フランチャイズは、個人事業主だけでなく法人でも開業できます。個人事業主と法人では、フランチャイズで開業する場合に次のような点で差が出ます。
- 開業にかかる手間と費用
- 支払うべき税金の種類
- 経費にできる範囲
- 信頼性の高さ
それぞれ、詳しく解説します。
開業にかかる手間と費用
個人事業主と法人では、開業にかかる手間と費用に差があります。
個人事業主の場合、開業届を出すだけで開業が認められます。しかし、法人を作るには印紙代や手数料がかかりますし、手続きも複雑です。また、確定申告も法人の方が複雑です。
個人事業主の方が、法人と比べて手軽に開業できます。
支払うべき税金の種類
個人事業主と法人では、支払うべき税金の種類が異なります。それぞれが支払うべき、事業に関する税金の種類は次の通りです。
個人事業主 | 法人 |
所得税住民税個人事業税消費税 | 法人税法人住民税法人事業税地方法人特別税消費税 |
どちらの方が支払う金額が大きくなるかはケースによって異なりますが、一般的には売上が小さいうちは個人事業主の方が払うべき税金が少なく、金額が大きくなると法人の方が払うべき税金が少なくなります。そのためまずは個人事業主として開業し、売上金額が大きくなってから法人化するのもおすすめです。
経費にできる範囲
個人事業主と法人では、経費にできる範囲が異なります。法人の方が経費として計上できる範囲が広く、経営者自身への給与や賞与も経費として計上できます。売上が増え、支払うべき税金が多くなってきたら、法人化を検討してみると良いでしょう。
信頼性の高さ
個人事業主と比べると、法人の方が社会的な信頼性が高い傾向があります。さまざまな理由がありますが、一番大きいのは、法人化すると履歴事項全部証明書に会社の情報が記載され、誰でも閲覧できるようになる点です。取引する際にも、直接相手から情報を教えてもらうより、第3者から情報を得られる方が信頼しやすくなるでしょう。
信頼性の高さに差があるため、法人のみ契約可能なフランチャイズもあります。フランチャイズの会社を選ぶ際には、個人事業主でも契約可能か確認しておく必要があります。
個人事業主がフランチャイズを経営するコツ
個人事業主がフランチャイズを経営するコツは、次の3つです。
- リスクヘッジを考える
- 資金に余裕を持たせる
- 独自の宣伝活動で集客する
それぞれ、詳しく解説します。
リスクヘッジを考える
経営にはリスクがつきものです。例えば、災害などによって店舗が運営できなくなる可能性もありますし、運営中の事故などで損害賠償が発生する可能性もあります。
保険に入るなど、いざというときのために対策を用意しておくと、ピンチの時でも焦らずに済むでしょう。
資金に余裕を持たせる
個人事業主がフランチャイズを経営するには、資金に余裕を持たせておくことも必要です。上記で解説したリスクヘッジの面に加え、何か新しいプロモーションなどを行おうとしたときにも、資金が必要になる場合があります。
日々の売上の中から積み立てを行っておくだけでなく、補助金や助成金についても調べてみてください。国や自治体の制度を利用すれば、より余裕を持った店舗経営ができるようになることもあります。
独自の宣伝活動で集客する顧客を増やしたいときには独自の宣伝活動を行ってみるのも良いでしょう。
フランチャイズでは本部でも集客のためにさまざまな宣伝活動を行います。しかし、本部に宣伝を任せきりにするのではなく、独自の宣伝活動を行うことで、より店舗独自の魅力をアピールできます。
ただし、フランチャイズでは宣伝に関してさまざまな規約を設けている場合があります。宣伝活動を行う際には、規約に抵触していないか事前に確認しておきましょう。
個人事業主がフランチャイズを経営する際の注意点
個人事業主がフランチャイズを経営する際には、次の2点に注意する必要があります。
- 契約書を細かい部分まで確認する
- トラブル事例を確認しておく
それぞれ、詳しく解説します。
契約書を細かい部分まで確認する
フランチャイズ契約をする際には、契約書を細かい部分まで確認しておかなければなりません。
契約書の確認不足によるトラブルは多くあります。きちんと隅から隅まで契約書を確認した上で、わからないことがあれば周囲の人や専門家に相談して解決しておきましょう。不明な点を残したまま、契約を交わしてしまうのは危険です。
弁護士など、法律のプロに契約書を確認してもらうことを「リーガルチェック」と呼びます。スポット対応でリーガルチェックしてくれる法律事務所もあるため、契約前に利用してみるのもひとつの方法です。
トラブル事例を確認しておく
過去に起きたトラブル事例を確認しておくことも欠かせません。
他者のトラブル事例を確認しておくことで、自分自身がトラブルに巻き込まれる可能性を下げられます。トラブルに関する情報は次のような機関から公表されています。
- 中小企業庁
- 公正取引委員会
- 日本フランチャイズチェーン協会
さまざまなトラブル事例を確認し、契約に不安な点があれば事前に問い合わせておきましょう。
まとめ
個人事業主がフランチャイズを経営すると、知名度の高いブランドの看板を背負ってビジネスを始められるため、さまざまなメリットがあります。ただし、メリットだけでなくデメリットもあるため、事前によく確認しておきましょう。
個人事業主としてある程度売上が増えてきたら、法人化することで節税につながる可能性があります。この記事を参考に、個人事業主としてのフランチャイズ開業について、考えてみてください。