補助金を活用して美容室の開業資金を抑える!主要な制度や申請時のポイントなどについて開設
美容師として経験を積み美容室のオープンを検討していると、資金についてお悩みになる方も多いでしょう。美容室の開業には多くの資金が必要になります。そこでこの記事では、活用できる補助金や助成金についてまとめ、申請方法なども併せて記載しました。美容室の開業に向け、ぜひご活用ください。
美容室の数は約25万店舗であり毎年増えている(2022年1月時点)
街中を少し歩くと、あちこちに美容室を見かけます。厚労省の「令和2年度衛生行政報告例の概況」の生活衛生関係を見ると、美容室の数は毎年3000~4000店舗ペースで増加しており、2022年1月(令和2年)時点での美容室の数は約25万店舗となっています。これは、美容関係のニーズが高まっているとも読み取れ、美容室を新たに開業したいと考えている方にとっても、大きなチャンスかもしれません。
美容室の開業資金は1,000万円前後が目安
美容室を開業するためには、多くの資金が必要です。おおまかに見積もると、美容室の開業には以下の資金が必要になります。
店舗(テナント)の物件取得費……100万円~200万円
内装費用……400万円~500万円
設備費(椅子、鏡、シャワー台、材料など)……200万円前後
運転資金……100万円~200万円
上記に営業保証金やFC加盟金などを加えると、美容室の開業は1,000万円前後が目安となりそうです。店舗の広さや、椅子やシャワー台の数、提供するサービスの種類などによっても必要な金額が変化します。
資金の負担を減らすために補助金を活用しよう
必要最低限の設備に加え、開業時に「あれも、これも……」と考えると、開業資金が膨らむこともあります。開業資金を補う方法としては、自己資本や金融機関からの融資に加え、周囲の人にも出資をお願いできるかもしれません。
とはいえ、自己資本を貯めるのには時間がかかります。融資を受ける際も自己資本がある程度必要になりますし、なかなか周囲からの借金はしにくいものです。
特に、美容室は長時間お客さんがとどまるので、エアコンや空気清浄機など、快適に過ごしてもらうための設備が必要になります。初期費用が膨らみがちなので、補助金制度の活用を検討しみましょう。
補助金を活用するメリット
美容室の開業時に利用できる補助金制度には、以下のメリットがあげられます。
原則として返済が不要である
補助金制度を利用すれば、基本的に返済なしで資金を調達できます。補助金給付対象になるための条件は細かく定められているため、厳密な審査がつきものですが、審査を通過すれば、確実に開業時の負担を軽減できるでしょう。
用途が幅広い
補助金制度は、「設備導入費用の補助」「新規事業にかかる負担の補助」「人件費の補助」など、補助対象が幅広いため、さまざまな用途で使いやすい制度です。
美容室の開業においても、「ここの資金が膨らむのがネック」といった状況にぴったりな補助金が見つけやすいはずです。開業資金を抑えられれば、ほかに費用を回せ、理想的な状態で美容室をスタートさせられるかもしれません。
繰り返し受給できる補助金もある
補助金制度によっては、繰り返し利用できるものもあります。たとえば、「小規模事業者持続化補助金」や「ものづくり補助金」などは、過去に採択された事業でも、繰り返し申請が可能です。
ただし、小規模事業者持続化補助金の複数回申請は、採択された日から11ヶ月以上経っている必要があり、ものづくり補助金は、過去3年以内に2回以上の交付決定を受けていると「申請対象外」となる点に注意が必要です。
支給額が大きい
補助金制度は、数百万円以上のものも多くあり、なかには数千万・億単位という金額のものもあります。金額の点では、助成金制度よりも支給額が多く、開業時の負担が大きくなりがちな美容室にとっては、かなり心強い存在です。
募集期間が決まっているため、1次募集にはタイミングが合わなかったというケースも考えられますが、人気の補助金制度には、2次3次と募集が半年~毎年追加されることも珍しくありません。条件に当てはまれば、何度も利用でき、サポートしてもらえる金額が大きい点も補助金制度のメリットです。
設備導入や人件費などの負担を軽減できる
補助金制度を利用すれば、開業時の設備導入だけでなく、継続して発生する人件費の負担も軽減できるでしょう。美容室の開業には設備だけでなく、美容器具やシャンプー・トリートメント・カラーリング剤などの材料費に加え、資格を持った専門スタッフやアシスタントなどの人件費も必要になります。
顧客の満足度を高めるため、質の高いサービスを提供するためには、こうした費用も用意しなければなりません。補助金制度を利用して、設備費や人件費の負担を軽減できれば、より質の高いサービスを提供でき、経営戦略の点で有利に働くでしょう。
受給できれば社会的な信頼性が増す
厚生労働省や経済産業省による補助金制度の審査は厳密で、条件にひとつでも当てはまらなければ、支給されません。裏を返せば、補助金の支給を受けられる店や企業は、社会的な信用度が高いと考えられます。補助金制度を活用して運営・経営している=公的に信頼できる店舗・企業というイメージを上手に活用できれば、今後の営業や取引などにも良い影響があるでしょう。
美容室が使える主要な補助金!受け取り手順も紹介
補助金制度にはさまざまな種類があります。美容室を開業するにあたり利用できる主な補助金についてご紹介しますので、申請や受け取りの手順も合わせてチェックしておきましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額が300万円以下の小規模事業者等が、販路開拓に取り組む際の費用を一部補助する制度です。
●補助対象者
次の1.から4.に掲げる要件をいずれも満たす日本国内に所在する小規模事業
1.小規模事業者であること
2.資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接(※)に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
3.確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
4.下記2つの事業において、本補助金の受付締切日の前10ヶ月以内に、先行する受付締切回で採択を受けて、補助事業を実施した(している)者でないこと
・「令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>」
・「令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>」
引用:令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 公募要領
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo.pdf
●補助対象事業
1.策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること
2.商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
3.以下に該当する事業を行うものではないこと
・同一内容の事業について、国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)する他の制度(補助金、委託費等)と重複する事業
・本事業の終了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれない事業
・事業内容が射幸心をそそるおそれがあること、または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがあるもの、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの
4.共同申請の場合には、連携する全ての小規模事業者等が関与する事業であること
引用:令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 公募要領
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo.pdf
●補助率
補助率は2/3(賃上げ引上げ枠の赤字事業者は3/4)
●補助上限
通常枠:50万円
賃上げ引上げ枠:200万円
卒業枠:200万円
後継者支援枠:200万円
創業枠:200万円
インボイス枠:100万円
引用:令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 公募要領
●申請手順
1.申請の準備
2.申請手続き
3.申請内容の審査
4.採択・交付決定
申請書類一式をそろえて、電子申請または郵送にて提出し、各種審査を通過すれば、交付決定です。その後、補助事業に取り組み、実績報告書を提出した後、補助金額の確定、請求、受け取りとなります。
参考:小規模事業者持続化補助金
https://r3.jizokukahojokin.info/
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等が、自社の課題・ニーズに合ったITツールの導入をする際、経費の一部を補助する制度です。
●補助対象者
中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)、小規模事業者
●補助対象経費
ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費(デジタル化基盤導入枠のデジタル化基盤導入類型のみ)
●補助率と補助下限・上限
・通常枠A類型
補助率:1/2以内
補助下限・上限:30万円~150万円未満
・通常枠B類型
補助率:1/2以内
補助下限・上限:150万円~450万円以下
・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
補助率:3/4以内または2/3以内
補助下限・上限:5万円~50万円以下※、または上限50万円~350万円以下(補助率2/3の場合)
※第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」
・ハードウェア購入費用(デジタル化基盤導入類型)
補助率:1/2以内
補助上限額:10万円(PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器)、または20万円(レジ・券売機等)
●申請手順
1. 本事業への理解
2. IT導入支援事業者の選定、ITツールの選択
3. 「gBizIDプライム」アカウントの取得、「SECURITY ACTION」の実施(申請要件)
4. 交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
IT導入補助金では、導入するITツールを決め、IT導入支援事業者と商談を重ねながら、交付申請を行った後、後補助事業(ITツールの発注・契約・支払い)の実施を進めていきます。事業完了後、事業実績報告をし、補助金交付手続きをしてください。最後の作業となる事業実施効果報告は、IT導入支援事業者の確認を経て提出となります。
参考:IT導入補助金2022
https://www.it-hojo.jp/
ものづくり補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が、賃上げや被用者保険の適用拡大などの制度変更に対応するため、設備投資を行うときに支援を受けられる制度です。
●補助対象者
中小企業および、製造業その他業種・宿泊業・娯楽業を営む従業員数20人以下の小規模事業者、または卸売業・小売業・サービス業を営む従業員数5人以下の小規模事業者・個人事業主など
●補助要件
以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定している必要があります。
1. 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
2. 給与支給総額年率平均 を1.5%以上増加
3. 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金地域別最低賃金)を+30円以上の水準にする
●対象事業および補助金額
・通常枠
概要:革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額:100万円~1,250万円(従業員数により変動)
補助率:1/2(小規模事業者は2/3)
補助対象経費費:機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、など
・回復型賃上げ・雇用拡大枠
概要:業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者(※)が行う、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
※応募締切時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であり、常時使用する従業員がいる事業者に限る
補助金額:100万円~1,250万円(従業員数により変動)
補助率:2/3
補助対象経費費:機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、など
・デジタル枠
概要:DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額:100万円~1,250万円(従業員数により変動)
補助率:2/3
補助対象経費費:機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、など
・グリーン枠
概要:温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額:100万円~2,000万円(従業員数により変動)
補助率:2/3
補助対象経費費:機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、など
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/13th/reiwakoubo_20221025.pdf
●申請手順
1.公募要領を理解する
2. 「gBizIDプライム」アカウントの取得
3. 交付申請
ものづくり補助金は、電子申請のみとなっており、交付申請から補助金の支払い、報告まで、すべてのフローは100%電子化されています。申請時に必要な「gBizIDプライム」アカウントは、ID発効までに2週間程度かかるため、早めの手続きをしておきましょう。
電子申請システムにログインした後入力する内容は、「応募者概要」「経営状況」「事業内容」「事業計画書」「経費明細表」などです。そのほかにも添付する書類がいくつかあるため、公募要領を理解する過程で、必要な書類を揃えておくと良いでしょう。
参考:ものづくり補助金総合サイト
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等を支援する制度です。
●補助対象者
・通常枠
以下のいずれかにあたる中小企業等
1.売り上げが減っている
・2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または、2020年1~3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少している
・または2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3ヶ月の合計付加価値額と比較して15%以上減少している
2. 分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む
3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
・回復・再生応援枠
通常枠の申請要件に加え、以下の1.及び2.を満たす中小企業等
1.2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020 年又は2019 年同月比で30%以上減少している
2.中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受け再生計画等を策定している
・最低賃金枠
通常枠の申請要件に加え、以下を満たす中小企業等
・2020年10 月から2021年6 月までの間で、3ヶ月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いる
・緊急対策枠
通常枠の申請要件に加え、以下を満たす中小企業等
・足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化を受けたことにより、2022年1月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少している。また、コロナによって影響を受けている。
このほか、大規模賃引上枠や、グリーン成長枠などもあります。
●補助率および補助限度額
・通常枠
補助率:2/3(中堅企業等は1/2)
補助下限・上限:100万円~2,000万円(従業員数20人以下)、100万円~4,000 万円(従業員数21~50人)、100万円~6,000 万円(従業員数51~100人)、100万円~8,000 万円(従業員数101人以上)
・回復・再生応援枠
補助率:3/4(中堅企業等は2/3)
補助下限・上限:100万円~500万円(従業員数5人以下)、100万円~1,000万円(従業員数6~20人)、100万円~1,500万円(従業員数21以上)
・最低賃金枠
補助率:3/4(中堅企業等は2/3)
補助下限・上限:100万円~500万円(従業員数5人以下)、100万円~1,000万円(従業員数6~20人)、100万円~1,500万円(従業員数21以上)
・緊急対策枠
補助率:3/4(中堅企業等は2/3)
補助下限・上限:100万円~2,000万円(従業員数5人以下)、100万円~2,000 万円(従業員数6~20人)、100万円~3,000 万円(従業員数21~50人)、100万円~4,000 万円(従業員数51人以上)
●申請手順
1.認定支援機関と事業計画の策定、事業計画書の作成
2.「gBizIDプライム」アカウントの取得
3.必要書類を揃えて交付申請
申請時に必要な「gBizIDプライム」アカウントは、ID発効までに2週間程度かかる ため、早めの手続きをしておきましょう。また、必要書類も多くあるため、ログインして必要事項を入力する前にすべて揃えておくのがベストです。
また、採択決定となった後、補助金の交付審査申請を行いますが、審査の結果、補助対象経費として認められない経費が含まれていると、補助金額が減額されることもあるため注意してください。補助事業実施期間(12ヶ月~14ヶ月)を経て、補助金額の請求・支払いとなります。
参考:事業再構築補助金
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
補助金を申請する際のポイント
補助金は審査が厳しいため、申請時にミスのないよう注意が必要です。補助金の支給を確実に受けるためのポイントを解説します。
募集要項や必要な書類を細かく確認する
補助金の申請には、多くの書類が必要です。事業の内容や決裁書など、求められている情報がしっかり記載されているか細かくチェックしておきましょう。補助金のなかにも、さまざまな枠があるため、応募条件を満たしているかも丁寧にチェックしてください。
申請内容が補助金の支給目的に沿っているかチェックする
補助金はサポートする対象が明確になっています。補助金制度の目的に沿った内容で申請できているかも、しっかりチェックしてください。一見すると似たような内容や名前でも、取り扱っている官庁が違っていたり、目的や対象が異なっていたりするので、応募要項をしっかり理解しておきましょう。
申請書や事業計画は具体的に作成する
補助金制度は、目的に沿った事業計画の提出が求められることも多いため、今後どのようなビジネスを展開し、どのくらいの売り上げを見込めるのかなど、具体的な計画を立てておきましょう。また、その計画が明確に伝わるよう、事業計画書を作成する必要もあります。実績、エビデンス、戦略など、信憑性の高い情報をもとに、事業計画を立ててください。
誰が読んでもわかりやすい内容でまとめる
補助金が必要だという思いが強いあまり、主観的な熱がこもってしまうと、必要な情報が伝わりにくくなってしまうかもしれません。誤解を招く表現や、求められていない不要な内容などは書かないようにしましょう。客観的な目線で必要な情報を厳選し、誰が読んでもわかりやすい内容に整えてください。また、書類審査をする人は、業界に詳しいわけではありません。専門用語は極力避け、必要な場合は補足・解説をプラスしておきましょう。
補助金と助成金の違い
補助金とよく似た言葉に助成金があるため、違いがよくわからないかもしれません。ここでは、補助金と助成金の違いについて簡単にご紹介します。
補助金
補助金は主に経済産業省が管轄する制度で、財源は税金です。サービス形態やビジネスモデルの実現を目的として取り決められることが多く、申請条件や審査のハードルが高いのが特徴です。支給額も助成金にくらべ高額で種類が多くありますが、予算上限や定数が設定されているため、必ず受け取れるとは限りません。
助成金
助成金は主に厚生労働省が管轄する制度で、財源は雇用保険料です。雇用を目的とする場合は厚生労働省から、研究開発を目的とする場合は経済産業省から取り決められます。補助金にくらべ、支給額は低めですが、受給要件を満たしていれば、申請によって受け取れる可能性が高い点が、助成金の特徴です。
補助金導入を検討する際の注意点
美容室の開業は、補助金制度を上手に利用すれば、開業資金を節約できるでしょう。ただし、補助金制度ならではの注意点もあります。
申請しても必ず受給できるとは限らない
前項でもご紹介した通り、補助金制度は必ず受給できるとは限りません。予算や定数に達すれば、応募期間内であっても打ち切られる場合もあります。また、受給要件がかなり厳密に定められているため、ひとつだけ条件を満たしていなくても、審査に落ちてしまうことがあります。
一度は費用を自己負担する必要がある
補助金制度は、特定の事業を達成することを条件に、補助金の支給を請求できます。制度上「後払い」の形になるため、設備の導入やIT化などに取り組む場合、まずは自己負担になることを覚えておきましょう。手元に資金がない場合、補助金制度の利用が難しいケースもあります。
事業の成果報告が必要になる
補助金制度の目的は、現金の支給ではなく、そのサポートによって、企業の成長や労働環境の改善を図ることです。そのため、支給された補助金を目的通り正しく使っているという報告書を、後日提出しなければなりません。補助金制度を利用する際は最後の報告までしっかりできるよう、計画を立てておきましょう。
美容室の開業にあたり補助金以外で準備すべきこと
美容室の開業には、補助金制度の利用以外にも、資格を持ったスタッフを揃えたり、保健所に届出をしたりと、準備しておくべきことがあります。事前に確認しておきましょう。
美容師免許を取得する
実際にお客さんの髪を切ったり、カラーリングをしたりするスタッフは、美容師免許を持っている必要があります。自身がオーナー兼美容師という場合も同様です。一方、施術は美容師スタッフのみが行い、自身はお店の経営管理だけするという形であれば、オーナーの美容師免許は不要となります。
美容師が2人以上在籍している場合は管理美容師資格も必要
資格を持った美容師が、お店に2名以上在籍している場合は、最低1人は「管理美容師免許」を取得している必要があります。管理美容師は、美容師免許の取得から3年以上の実務経験があり、かつ全3日間の管理美容師講習会を受講した人が取得できる資格です。通常の美容師資格と同様に、オーナー自身が施術を行わないのであれば、オーナーが管理美容師免許を持っている必要はありません。
美容所開設届
美容室を開業するときは、地域の保健所に「美容所開設届」を提出しなければなりません。届出の内容が、地域の基準に沿っているか、現地でのチェックが行われます。結果が出るまでには1~2週間程度かかることもあるため、早めに提出しておきましょう。 開設届の書式は保健所の窓口やホームページで入手できます。
開業届
開業届の正式名称は「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」で、事業を開始した日(開業日)から1ヶ月以内に、事業所を管轄する税務署へ提出してください。開業届と一緒に、青色申告承認申請書を提出すれば、控除額が大きく増えます。また、家族を従業員として雇う場合も、支払った給与を経費に計上できるメリットがあるため、忘れずに提出してください。
美容室の経営を軌道に乗せるコツ
無事開業ができても、上手に経営をしていかなければ、お店を維持できません。ここでは、美容室の経営を軌道に乗せるコツをご紹介します。
補助金を確実に通して資金を確保する
美容室はお客さんを相手にするビジネスのため、常に一定の収入があるとは限りません。なんらかの理由で客足が鈍くなることや、売上が変動することも珍しくないでしょう。それでも、設備の維持費やテナント料、人材費などは必ず必要になります。そうした経費の支払いを維持できるよう、くりかえし利用できる補助金は、条件を整えてできる限り利用し続けていきましょう。
居抜き物件なども活用して開業(運転)資金を抑える
経営を続けていくなかでも、家賃やテナント料は大きな負担となります。可能であれば、美容室としての設備が整っている居抜き物件を探してみましょう。居抜き物件を活用できれば、初期投資の負担を大きく軽減できます。ただし、美容室の開業には保健所の審査をパスしなければなりません。基準をクリアできる物件か注意深く確認してください。
集客施策に力を入れる
お客さんに来てもらえなければ、美容室の営業を続けられません。公式ホームページを作ったり、SNSのアカウントを作って発信したり、チラシや雑誌広告などでお店の周知を図りましょう。近年では、動画サイトやアプリを活用した宣伝も効果的ですし、若い人をターゲットにする場合は、スマホで見やすい広告かどうかも重要になってくるでしょう。
他の美容室との差別化を図る
冒頭でご紹介した通り、美容室の数は増え続けています。お客さんは、「どの美容室が自分にピッタリか」「どこならオシャレに仕上げてもらえるか」などを基準にお店選びをするはずです。例えば、「安心してカラーリングがまかせられる」や、「キッズスペースや託児所完備でお子様連れでも行きやすい」など、周辺の美容室との差別化を図れば、コンセプトを前面に押し出した宣伝がしやすいでしょう。
美容室の開業・経営には補助金を積極的に活用しよう
美容室の開業は、初期費用が大きくかかります。補助金を活用して、開業資金を上手にやりくりしていきましょう。開業後も繰り返し使える補助金もあるので、そうした制度も継続利用しながら、安定した経営を目指してみてください。また、保健所への届出や、必要な美容師資格なども定められているため、規則に沿った営業ができる状態かも、しっかりチェックしておきましょう。