創業融資を受ける方法とは?必要書類や申し込みの手順を解説

会社創業時は資金力が乏しく実積もないため、金融機関からの融資は受けにくく資金繰りに苦労しやすいのが実態です。

会社の創業を支援する「創業融資」を活用すれば、創業資金は確保できる場合がありますが創業融資は申請すれば必ず承認されるものではなく、入念な審査が行われます。また、条件や必要書類、申請方法などさまざまな決まりがありますので、下調べをしておくことが大切です。

そこで本記事では創業融資の要件や必要書類のほか、審査に通るコツや手順を解説します。

掲載物件数80,000件以上

リクルートの運営する店舗物件検索サイトTempodasに登録いただくことで、多数の未公開物件や、周辺の商圏のデータ等を閲覧することが可能です。

無料登録

創業融資の特徴とは

創業融資の制度の概要や審査難易度を解説します。これから会社の創業を考えている方は、よく理解しておきましょう。

新規事業を開始するための資金を融資する制度

創業融資とは、これから事業を立ち上げようとする人に対して、資金を提供する制度です。新規事業を立ち上げるには人件費、設備費、店舗準備費など多くの費用がかかるため、自己資金のみでは賄うことが困難です。そのため、銀行などの金融機関から資金調達を行うのが一般的ですが、実積ある会社でなければ、融資の審査に通るのは困難です。

そこで、実績のない方でも創業に必要な資金を調達できるように政府が設立した制度が創業融資制度です。なお、創業融資には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」と、都道府県や市町村が行う「制度融資」の2種類があるので、それぞれの特徴を把握することも大切です。

創業融資の審査難易度

創業融資の審査通過率などは公表されていません。そのため一概に言えませんが、好条件がそろっている関係上、審査難易度は高めと考えられています。

特に日本政策金融公庫の創業融資は、無担保で連帯保証人も必要ないうえ低金利で融資が受けられ、長期にわたる返済が可能なので活用しやすい融資制度です。そのぶん厳しい審査が行われるため、しっかりと準備をする必要があるでしょう。

創業融資の審査に通るコツ

一般的に融資の審査に通るためには「実現性のある経営計画を作成する」「自己資金を多くする」「他の借入金などマイナス要素を排除する」などが有効な対策とされています。

しかし、創業前の会社の場合、マイナス要素を減らすことはできても、自己資金を増やすのには限界があるでしょう。

そのため、実現性の高い経営計画を立て、根拠のある事業計画書を提出することが重要です。無理のある経営計画を立ててしまうと、事業の見通しが甘いと判断されマイナス評価になるので、入念な準備をするようにしてください。

創業融資の種類

創業融資には3種類の制度が存在しますが、もっとも代表的な融資は日本政策金融公庫の融資です。以下にそれぞれの特徴を開設します。


<H3>日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫は政府金融機関の一つです。「新創業融資」「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」の3種類を展開。

3種類とも創業前・創業直後の事業者が無担保・無保証で利用できる創業融資で、どれも新たに事業を始める方を対象としています。

融資限度額は「新創業融資」が3,000万円(うち運転資金1,500万円)、「新規開業資金」と「女性、若者/シニア起業家支援資金」が7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっています。

金利は全体的に低めですが、0.5~2.8%と幅広く、融資期間、担保の有無などによって異なる利率が魅力です。詳しく知りたい場合は窓口へ直接問い合わせる必要があります。

その他、具体的な要件などについては、以下の日本政策金融公庫ホームページより確認するようにしてください。

参照:日本政策金融公庫|融資のご案内

地方自治体の制度融資

「制度融資」は都道府県や市区町村などの地方自治体が、民間の金融機関、信用保証協会と連携して提供する融資制度です。地方自治体が窓口となり、金融機関の斡旋をする形になります。この際の融資には、貸し倒れリスクに備え、信用保証協会の保証をつけることになっています。

そのため、融資を受けた会社が返済不能に陥った場合でも、保証協会が保証するので金融機関も安心して融資できるでしょう。ただし、信用保証協会の保証を受けるには、融資を受ける側に保証料の支払いが義務付けられている点に注意が必要です。

制度融資は金利が低く、1%未満で借りられるケースもありますが、申し込みから融資までの期間が長いほか、自治体によって制度が異なり、制度融資自体がない自治体もある点がデメリットといえるでしょう。

民間の金融機関の創業融資

民間の金融機関でも創業融資を提供しているケースがあります。ただし、全体的に融資の条件が厳しく、審査期間も長くなります。

融資限度額は、プロパー融資であれば高額が可能ですが、それ以外は比較的低めです。プロパー融資は実績のある会社でなければ審査が通りにくい融資なので、創業したばかりの会社が利用するのは現実的ではないでしょう。また、金利などの制度内容は、金融機関によって変更される可能性があります。そのため、各金融機関に問い合わせることをおすすめします。

創業融資の申し込みに必要な書類

創業融資を申し込むには多くの書類が必要になります。ここでは代表的な創業融資である日本政策金融公庫の創業融資を例にして解説します。

創業計画書

創業計画書は、創業の動機や経営者の略歴、取扱商品・サービス、必要な資金と調達方法、事業の見通しなどを記入した計画書です。創業融資の審査ではもっとも重要視される書類と考えて良いでしょう。

創業計画書の書式は。日本政策金融公庫のホームページからダウンロードするか、各支店で受領する方法があります。記入例などは支店ごとに作成している場合があるので、記載方法が分からなければ、申込予定の支店に一度問い合わせするのがおすすめです。

借入申込書

借入申込書は創業融資に限らず、借り入れをする際には必ず必要になります。申込人や申込金額、借入希望日や返済期間、資金使途や連絡先などを記入する必要がありますが、内容自体はさほど難しくありません。

こちらも日本政策金融公庫のホームページから書式をダウンロードできるほか、公庫の各支店にも備えつけてあります。ホームページから記載例も閲覧できるので、参考にすると良いでしょう。

見積書(設備資金の申し込みの場合)

設備資金を申し込む場合は、見積書が必要になります。主に事務所や店舗を開業する際の内装・外装工事費などが該当するでしょう。施工業者から受け取った見積書をそろえておけば問題ありません。ただし、見積金額が一般的な相場と乖離している場合、受理されない可能性もあるので注意してください。

履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)

申込者が法人の場合は必要になります。登記簿謄本は法務局で管理する不動産の所有者や物件の住所、面積、構造、地目などの情報が記載された書類です。電子データとして管理されているため、記録された内容を用紙に印刷して証明書として発行したものが登記事項証明書であり、法務局へ申請することで取得できます。法務局で直接入手することもできますが、法務局のサイトからオンライン申請することも可能です。

不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(不動産担保を希望する場合)

不動産担保を希望する場合、必要になります。不動産の登記簿謄本とは、その不動産の所在地、面積、所有者の氏名、権利関係などの情報が記載された文書です。入手方法は上記で説明した法人の登記簿謄本と同様の手段で入手できます。

その他

その他に必要になる書類としては、本人確認書類、印鑑証明書、勤務時の源泉徴収票、預金通帳などがあります。主に区役所で入手でき、長期間時間を要するものはありませんが、事前にチェックしておくようにしましょう。

創業融資の申し込みの流れ

日本政策金融公庫の新創業融資の申し込み方法や融資が決まるまでの流れを解説します。

金融機関へ相談する

まずは金融機関に相談することから開始します。融資を希望する金融機関を選び、相談の際に必要となる書類など用意しましょう。

金融機関には都市銀行や地方銀行、信用金庫のほか、近年では店舗を構えないネット銀行などがありますが、日本政策金融公庫の場合は、全国にある支店が存在するので、近くの支店へ問い合わせるのが基本です。

審査の申し込みをする(インターネットも可)

次に融資審査の申し込みに移ります。申し込みは実際に支店に訪問して申し込む方法と、郵送で申し込む方法があります。郵送の場合は書類などに不備がある可能性に備え、早めの申請をしたい場合は支店に直接相談をするのがおすすめです。

面談を行う

融資審査の申し込みが完了した後、日本政策金融公庫の担当者と面談を行います。創業融資の面談では、返済能力はあるか、経営計画に問題はないかなどが注目されます。特に創業融資では創業計画書が重視されるので、入念に作成することが大切です。

また、面談の際には担当者から事業計画に関して質問が来ることが想定されます。その際に創業する業界の知識や事業への熱意をはっきりと伝えられれば、審査にプラスになることも考えられるので、しっかりと準備しておくことをおすすめします。

審査結果が通知される

融資担当者との面談が完了した後、融資の審査の段階に移ります。審査が完了すると、日本政策金融公庫から審査結果が通知されます。

面談から大体1週間程度で審査結果が通知されますが、年末年始など時期によっては遅れるケースもあるため、ある程度余裕を持ったスケジュールを立てておくことをおすすめです。また、借用証書など契約に必要な書類が送付されるので、速やかに手続きするようにしましょう。

融資開始

契約の手続きが完了すると、融資金が指定の銀行口座へ送金されます。なお、返済は原則として月賦払いですあり、返済方法は、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などから選択することになります。

創業融資の審査のポイント

創業融資の審査のポイントを、他の融資との違いを踏まえながら解説します。

創業融資とその他の融資との違い

通常の融資では、事業の安定性・成長性、財務状況、業界での地位、担保・保証の有無などをもとに融資するかどうかを判断します。特に返済不能になるリスクに備えて、財務状況はもっとも重視する傾向があります。

創業融資でも財務状況は重視されますが、これから創業する方向けの融資なので、資金力が乏しくても事業の成長性があると判断されれば、融資に通る可能性が高まります。

そのためには、借入先の信頼を得られるように、実現性の高い創業計画書を作成することや、面接時に説得力をもった説明する能力が求められるでしょう。

創業融資の種類による審査難易度の違い

創業融資の中にも「新創業融資」「自治体の制度融資」「民間の創業融資」の3種類がありますが、審査の難易度には違いがあります。基本的に新創業融資がもっとも審査のハードルが低く、次に低いのが自治体の制度融資です。

一方、民間金融機関の創業融資は審査が非常に厳しい傾向にあります。

希望金額で審査に通るコツ

自分の希望する金額で融資審査に通るコツを解説する。

自己資金の割合を増やす

自己資金の多い会社は、返済能力や資金繰り能力が高いと判断され、信頼性の担保につながるため融資の審査に通りやすくなります。

貸し手側としては自己資金が多い会社であれば、事業で損失が出た場合でも返済が滞るリスクが少ないと判断できるためです。

一方、自己資金が少ない会社が審査に通るためには「同様の事業経験や実積がある」「売上の見通しが立っている」など、返済できる条件が整っている必要があります。

事業計画の質を高める

事業計画書は、経営プラン、行動計画をまとめ、どのような手法でビジネスを長期的に発展させていくかを示す文書です。金融機関は事業計画書を通じて、会社の成長見込みと融資返済の可能性を判断します。

そのため、事業計画書の作成にはしっかりと時間をかけ、経営プランや将来のビジョンを明確に記載することが大切です。特に創業時の融資では、金融機関の信頼性を得るための重要な判断材料になるので、丁寧に作成することを心かげましょう。

他からの借入がない

申込者にマイナス要素が多くあると、融資の審査に通りにくくなります。マイナス要素の代表的なものとして「他からの借入金の有無」があげられるでしょう。

創業融資を受ける場合は、他の借入金があればできるだけ完済した状態にしておくことをおすすめします。

同業・類似の事業の経験がある

創業前の場合、会社の実績がないため、創業計画書のほか、申込者のこれまでの経験や実績が重要視されるものです。創業する業界の経験や類似の事業の経験があれば、審査が有利になる可能性があります。また、審査の面談で経験・実績があることをアピールできれば評価が高まることでしょう。

創業時の借入金の目安とは

創業時の借入金はどの程度が望ましいのでしょうか。おおよその目安を以下に解説します。

創業融資の金額の平均は?

日本政策金融公庫総合研究所が実施した「2022年度新規開業実態調査」によると、2022年度の開業時の金融機関等からの借入金額(平均)は882万円であり、過去数年の平均値を見ても、大体800万円〜900万円前後で推移しています。

しかし、あくまで平均値であり、実際には平均と大きく異なる金額を借り入れているケースも珍しくありません。また、業種や会社の規模、資産状況。他の借入額などによって、必要な開業費用や借入可能額が異なるので、平均値は参考値程度と考えておくようにしましょう。

運転資金の目安

運転資金とは会社が事業を行うために必要な資金のことです。例えば商品の仕入れ、従業員の給与、広告などが該当します。運転資金を借り入れする場合の目安は、確定申告書や決算書から算出した月商の3ヶ月程度が望ましいでしょう。

具体的な金額相場は300万円~400万円程度ですが、こちらも業種や会社の規模、資産状況。他の借入額などによって変動する点を理解しておきましょう。

借入金の上限は自己資金の3倍が目安

借入金の上限額は、大体の目安として自己資金の3倍程度と考えておくと良いでしょう。ちろん、金融機関やローンの種類などによって異なりますが、自己資金の3倍を大幅に超える融資が受けられる可能性は低いといえます。

なお、新創業融資では、新たに事業を始める場合の自己資金は「創業資金総額の10分の1以上あること」が条件となっています。したがって、3割未満でも融資を受けられる可能性もありますが、同じ業種での実績などがあり、しっかりとした事業計画が示せなければ困難でしょう。

創業時の初期費用を抑えるには

創業融資は開業時には大きな支援になりますが、融資制度なので返済していく必要があり、利息もかかります。そのため、できるだけ初期費用を抑えて、返済リスクを減らしたい方も多いでしょう。そこで創業時の初期費用を抑えるポイントを3つ紹介します。

安価な物件を選ぶ

事務所や店舗に使用する物件の家賃は会社経営でもっとも費用がかかるポイントです。賃貸借契約時には敷金や礼金などの初期費用も高くつきます。また、入居時には賃貸借契約に関わる費用のほかに、事務所の内装や外装、空調、給排水などの設備工事も発生するケースがあります。

そのため、立地や築年数、設備といった条件をある程度妥協して、家賃ができるだけ低い物件を選ぶことで、初期費用を抑えるが可能です。ただし、立地が悪い物件は客足も遠のきますので、店舗経営をする場合には注意が必要です。

合同会社で起業する

「合同会社」とは会社形態のひとつで、一般的に小規模な会社に向いている手段です。会社の設立費を低く(最低6万円)で抑えられ、株式会社の約1/6の費用で済む特徴があります。

また、出資者と経営者が同一であるため、定款(ていかん)の認証をする必要がなく、定款の認証にかかる費用(約5万円)を抑えられます。全体として、株式会社より約10万円以上は少ない初期費用で始められるため、会社設立に伴う費用を抑えたい場合におすすめです。

居抜き物件を利用する

居抜き物件とは、前テナントが設備や什器備品、家具などをそのままの状態で賃貸する方法です。物件に入居する際、大規模な設備工事を行えば、数百万円単位の工事費がかかりますが、居抜き物件であれば工事費の負担なく事業を開始できるでしょう。

さらに内装や設備がそろった状態で入居できるため工事期間が短く、営業開始するまでの賃料負担も最小限で抑えることが可能です。特に店舗の営業においては、契約から営業開始まで期間が長引くと経営悪化につながりますので、大きなメリットであるといえます。

まとめ

会社を創業する場合、創業資金や運転資金といったお金をどのようにして確保するかは、重要な課題になるでしょう。

資金力や実績が乏しいと、民間の金融機関から大きな融資を受けることは困難なので、創業融資を始めとした創業したい方向けの融資制度を活用することをおすすめします。ただし、独自の要件や必要書類がありますので、事前に申し込み手順をよく理解しておきましょう。

また、少しでも創業時のコストを削減するために、居抜き物件を選ぶなど有効な対策を考えることが大切です。Tempodas(テンポダス)では未公開の店舗賃貸物件を効率的に検索できるツールを提供しております。多数の居抜き物件を手軽に検索できるため、これから開業することを考えている方にとって有益な情報が得られることでしょう。無料の会員登録を行えば、店舗物件や市場データの閲覧が可能になりますので、ぜひこの機会のご登録ください。