飲食店が利用できる補助金は?ピンチの時の切り抜け方と黒字化させるためのポイント

新型コロナウイルス感染症の影響が顕著に表れた「飲食店」。自粛要請や営業時間の短縮要請によって、売り上げが落ち込んだ飲食店に対し、国や地方自治体はさまざまな補助金や助成金を用意しています。支援制度を賢く利用すれば、金銭面での補助以外以上の効果が期待できるかもしれません。そこでこの記事では、利利用できる補助金制度や、今から取り組むことができめる黒字化対策について解説していきます。

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飲食店が補助金を利用する使うことはできる?

飲食店にとって新型コロナウイルス感染症の拡大は、大きなダメージとなりました。外出自粛要請に、営業時間の短縮、マスクの着用をはじめとする感染予防対策の徹底なども求められた結果、ほとんどの飲食店は大きく売り上げを落とし、閉店や倒産を余儀なくされた飲食事業者も少なくありません。

苦境に立たされている飲食店の経営をサポートするべく、国や地方自治体もさまざまな補助金や助成金で、コロナ支援を掲げてきました。コロナウイルス感染症の影響が出始めてから数年経ったいま、飲食店はコロナ対策の支援以外にも、多くの補助金を利用できるようになっています。ご自身の経営に合った補助金制度を上手に利用し、売上アップを目指していきましょう。

そもそも助成金や補助金とは?

助成金や補助金は、どちらも難しい状況にある事業者を支援する制度です。ここではその違いについて解説します。

助成金とは

助成金は、主に厚生労働省が扱う制度で、財源は雇用保険料です。支給される金額は補助金制度より少ないですが、申請時の条件を満たしていれば、基本的には全員に支給されます。

補助金とは

補助金は、主に経済産業省もしくは国や地方自治体が扱う制度で、財源は税金です。支給される金額は、補助金制度より高額ですが、申請時の条件を満たしている場合でも、支給されるとは限りません。予算が決まっており、コンペ形式のため競争率が高く、応募期間内であっても締め切られることがあります。

飲食店が利用できる補助金

飲食店は、どのような補助金制度を利用できるのでしょう。それぞれの補助金について簡単にご紹介します。

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業者を対象に、従業員の雇用維持を目的とした休業手当などの一部を助成する制度です。

支給対象となる事業主は、以下をすべて満たす事業主です。(2022年12月26日 執筆時点)

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
  2. 最近1ヶ月間の売上高または生産量などが前年同月比10%以上減少している(※)
  3. 労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている

※判定基礎期間の初日が令和4年9月までの休業については、5%以上減少が条件

助成率は2/3で、従業員一人一日あたりの上限額(中小企業)は、以下の通りです。

  • 令和4年12月~令和5年1月:原則8,355円、または9000円※
  • 令和5年2月~3月:原則8,355円

※最近3ヶ月平均の売上高等の生産指標が、前年同期、前々年同期または3年前動機に比べ30%以上減少しているか、緊急事態宣言の実地区域であることなどが条件

申請から支給までの流れは、休業等計画・労使協定ののち、休業の実施し、支給申請。労働局の審査が行われた後、支給決定となります。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、サービス業や小売業などを営む中小企業や中堅企業を対象に、新分野展開や業態転換、事業・業種転換等といった事業に対して補助金が支給される制度です。

補助金額は、以下の通りで、中小企業の補助率は2/3(6,000万円超は1/2)となっています。(2022年12月26日 執筆時点)

  • 従業員数20人以下:100万円 ~ 2,000万円
  • 従業員数21~50人:100万円 ~ 4,000万円
  • 従業員数51~100人: 100万円 ~ 6,000万円
  • 従業員数101人以上: 100万円 ~ 8,000万円

建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費 などが補助対象経費となります。

申請には、「gGizlDプライム」のアカウント登録が必要です。

事業再構築補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた取り組みをする小規模事業者等をサポートする補助金制度です。補助対象事業とされるためには、策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取組であることや、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であることが求められます。

執筆時点(2022年12月26日)で、補助上限は、通常枠が50万円、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠が200万円、インボイス枠が100万円となっており、補助率はいずれも2/3です(賃金引き上げ枠の赤字業者については3/4)。

申請は、電子申請、もしくは郵送申請ができます。持参による申請はできません。申請書や計画書など必要な書類一式は、「小規模事業者持続化補助金」の公式サイトからダウンロードしてください。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>

小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>は、一般型の小規模事業者持続化補助金と目的は同じですが、主に「感染拡大防止のための対人接触機会の減少」と「事業継続」を両立させる事業者を対象とした支援事業です。

例えば、大部屋を小部屋にするための間仕切りの設置や、新たにネットショップを開設して、商品やサービスを販売したり、旅館の料理をテイクアウトできる商品を開発したりする場合に利用できます。

補助率は3/4、補助上限は100万円です。対人接触機会の減少を目的とした、機械装置の導入に必要な経費と一部を補助するほか、感染防止対策に必要な経費、補助金総額の1/4(最大25万円、上乗せはできない)も補助対象にできます。(2022年12月26日 執筆時点)

宿泊業・娯楽業除く、従業員数(常時使用)5人以下の商業・サービス業や、従業員数20人以下の宿泊業・娯楽業、従業員数20人以下の製造業その他が補助対象者です。

申請、補助金請求、事業効果報告まで、すべて電子申請システム「Jグランツ」上で行われます。一般型と異なり、郵送での申請はできないため注意してください。

小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業等が、生産性向上のために、新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う際に、設備投資を支援する補助金制度です。

主に以下の3つの枠が用意されています。(2022年12月26日 執筆時点)

  • 【回復型賃上げ・雇用拡大枠】
    業況が厳しい中での投資補助上限750~1,250万円、補助率2/3
  • 【デジタル枠】
    DX、デジタル化に資する投資補助上限750~1,250万円補助率2/3
  • 【グリーン枠】
    温室効果ガスの排出削減、炭素生産性向上に資する投資補助上限1,000~2,000万円補助率2/3

補助対象となるのは、以下の要件を満たす事業計画(3~5年)を策定し、実行する中小企業等です。

  • 付加価値額+3%以上/年
  • 給与支給総額+1.5%以上/年
  • 事業場内最低賃金地域別最低賃金+30円

申請は、jGrantsによる電⼦申請のみとなっており、「gGizlDプライム」のアカウント登録が必要になります。

ものづくり補助金

IT導入補助金

IT導入補助金は、労働生産性の向上やセキュリティの向上などを目的とした、ITツールの導入をする際に活用できる補助金制度です。IT導入支援事業者と共に協力して、ITツールを導入していく事業で、ソフトウェア費やクラウド利用、導入関連費、サービス利用料などが補助対象となります。

通常枠(A・B類型)、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)があり、飲食店における業務の効率化や売上アップのサポートに通常枠が、会計管理などの効率化にはデジタル化基盤導入枠が利用できます。

補助額は以下の通りです。(2022年12月26日 執筆時点)

  • 通常枠A類型:補助額30万~150万円未満、補助率1/2以内
  • 通常枠B類型:補助額150万~450万円以下、補助率1/2以内
  • セキュリティ対策推進枠:補助額5万円~100万円、補助率1/2以内
  • デジタル化基盤導入類型:補助額5万円※2~350万円、補助率3/4以内(もしくは2/3以内)

※第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」

IT導入支援事業者側がITツールの登録と提案をし、企業や事業者側が導入するITツールの決定と事前準備を行い、共に交付申請をします。交付が決定すれば、実際にITツールを導入してください。事業実績を報告した後、補助金額が確定、補助金額の交付手続きになります。

申請には、「gBizIDプライム」アカウントの取得と、「SECURITY ACTION」の実施が必要です。

IT導入補助金2022

飲食店がの補助金を使う利用するなら!具体的なケース3つ

せっかく受給までこぎつけた補助金。補助金事業の目的に合わせながら、効果的に活用していきましょう。具体例をいくつかご紹介します

インフルエンサーなどを起用して宣伝してもらう

インフルエンサーとは、「influence」という英語が語源で、知名度や影響力の高い人を指します。多くの人がインフルエンサーの言動に注目しているため、SNSや動画サイトなどで、インフルエンサーにお店を紹介してもらえれば、大きな宣伝効果が見込めるでしょう。

こうした宣伝方法は、小規模事業者持続化補助金の補助対象経費のうち、広報費にあたります。補助金を活用して、インフルエンサーに宣伝してもらい、お店の知名度を上げる方法は、そのときだけの宣伝にとどまりません。「インフルエンサーが紹介していたお店」として実際にいった人が、SNSやブログなどで紹介し、さらに大ヒットしていく可能性も秘めています。

新しいデジタルサービスを取り入れる

飲食店の待ち時間短縮は、回転率のアップやお客さんの満足度アップにつながる重要な要素です。例えば、お客さんがタッチパネルを利用して注文できるセルフオーダーシステムがあります。導入できれば、スタッフが注文を聞きにテーブルにいき、厨房へ伝えに行く時間をカットでき、待ち時間短縮が可能になるでしょう。

そのほかにも、売上管理システムや財務会計ソフト、在庫管理やスタッフ管理をするシステム、POSレジなど、IT導入補助金を利用して導入できるツールで、人件費の削減や効率化が実現すれば、黒字化への近道になるはずです。

経営コンサルタントに依頼する

事業再構築補助金を活用した具体例では、デリバリーサービスの導入や、BBQが楽しめる宿泊施設事業の開始などがあります。こうした飲食店が新しいサービスを導入したり、新商品を開発したりする際に、経営コンサルタントに仕事を依頼した場合は、事業再構築補助金の専門家費用として補助金申請が可能です。

小さな工夫を積み重ねて売上アップや黒字化を目指す方法もありますが、事業再構築補助金が活用できる方法で、利益を出せないかどうかも検討してみてください。

補助金の他にも見直したい飲食店の経営ポイント5つ

経営が厳しい飲食店にとって、補助額の大きい補助金制度は心強い味方ですが、そのほかにも見直せるポイントがあるかもしれません。いくつか考えていきましょう。

テナント費用を見直す

飲食店におけるテナント料は、毎月変動のない固定費です。貸主の意向によって、テナント料が上がったり下がったりするかもしれませんが、おおむね毎月決まった額を支払います。利用している場所のテナント料が相場にくらべて高ければ、値下げ交渉や居抜き物件への移転を考えてみてください。

貸主との関係悪化が不安なら、賃料適正化のためのコンサルティングサービスを活用できるかもしれません。家賃サービスや法的根拠に基づき、家賃の適正化を交渉してくれるので、不要なトラブルを避けられます。

また、居抜き物件であれば、初期費用を抑えられるため、リノベーション(改築)に費用をかけて、今よりも魅力的なお店にでき、集客アップを見込めるかもしれません。加えて、客席を設けないデリバリーやテイクアウト専門にして、必要最小限の広さだけを持つ店にするのも選択肢のひとつです。

お金の流れを明確にする

飲食店の経営には、食材の仕入れコストや外注費、運送費、広告費など、毎月金額の変わる変動費もあります。なににどれだけコストがかかり、どれだけの利益に繋がっているのか、お金の流れを明確に把握しておくことは、黒字化に欠かせません。

売上アップのために忙しくしていると、帳簿の管理がおろそかになりがちです。お金の流れにあいまいな点があるなら、一度時間をとって見直してみましょう。売掛金が実際に回収できるタイミングや支出のタイミングに加え、器具や道具のメンテナンスがいつ必要か、そのための資金をどのように貯蓄していくかなど、綿密な計画が黒字化には必要かもしれません。

黒字化にむけて戦略を練る

長年経営を続けてきた老舗店も、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。また、スマートフォンを使ったサービスも拡大しており、消費者の傾向もめまぐるしく変化しています。店舗形態が、今の社会情勢や消費傾向にマッチしているかどうかも精査してみましょう。

感染症の影響が小さくなった後も、消費者の行動がwithコロナの形で定着した場合、客足が元に戻らない可能性も考えられます。ケースバイケースですが、デリバリーや予約テイクアウト中心のサービスに業態転換したほうが、黒字化しやすいかもしれません。統計などを調べながら、店舗の在り方も精査してみてください。

従業員の雇用の仕方を見直す

飲食店では、従業員の雇用方法も難しい課題です。2022年1月に行われた調査によると、飲食店の65.1%が人手不足を感じています。非正規募集でも、なかなか集まらないケースも多いようです。お店を回すためにひとりひとりの就労時間を引き延ばすにも、待遇面や体力面で限界があります。

従業員の雇用を見直すために、補助金制度を上手に利用して、自動化できるところや、セルフサービスを導入できる点がないかを検討してみましょう。一人当たりの仕事量を調整しやすくなれば、労働環境の改善にも繋がるかもしれません。働きやすければ、長時間労働のストレスも減るため、給与面での待遇を改善しつつ、人手不足の解消も期待できるでしょう。

仕入れ額の削減を目指す

飲食店の経営に大切な「原価率」の改善にも取り組んでみましょう。原価率を低く抑えるためには、仕入れコストを下げる必要があります。食材や道具など、業務に必要なものの仕入れ先を再検討してみるのはいかがでしょう。

例えば、野菜であれば、仲介業者を通さずに、農家から直接仕入れができれば、仕入れ額を低くできるかもしれません。また、仕入先の数を絞れば、値下げ交渉もしやすくなるでしょう。仕入先と交渉しながら、理想の原価率を目指していきましょう。

まとめ

飲食店の経営改善・黒字化には、補助金制度の利用に加え、各コスト軽減の工夫なども必要になります。取り組みやすい課題から、ひとつずつ精査し、改善策を検討し、実行計画を立てていきましょう。その過程で、利用できる条件が整う補助金や助成金が見つかるかもしれません。社会情勢や消費傾向も参考にしながら、具体的な経営改善・黒字化戦略を練ってみてください。