店舗売却の基礎知識|居抜きの特徴や費用、税金など注意点を詳しく解説

飲食店などの店舗が借りていた部屋を退去する際は、原状回復を行わず居抜きの状態で次のテナントへ売却するケースが多くあります。次に入居するテナントにとっては入居にかかる手間や工事費を削れるうえ、売却する側の店舗としても原状回復費を抑えられるため、双方にとってメリットのある方法といえます。

しかし、居抜きによる売却は条件が合うテナントが見つかるまで期間がかかる可能性など、デメリットやリスクも複数あるので、特徴を事前に把握しておくことをおすすめします。

本記事では店舗売却の基礎知識や、居抜きの特徴について解説します。

掲載物件数80,000件以上

リクルートの運営する店舗物件検索サイトTempodasに登録いただくことで、多数の未公開物件や、周辺の商圏のデータ等を閲覧することが可能です。

無料登録

店舗を退去する方法

店舗物件を退去する際は、原状回復して退去する方法と居抜きで退去する方法があります。それぞれの内容を以下に説明します。

原状回復して退去する方法

原状回復とは貸室を入居前の状態に戻すことをいいます。飲食店舗の場合、居抜きでなければスケルトン状態で貸し出すのが一般的です。

スケルトンとは建物の骨組みのことであり、内装がまったく施されていない状態の物件を指しています。したがって、この状態で入居した店舗が原状回復を行う場合、内装や設備など自分で用意したものすべてを解体・撤去しなければなりません。

内装の状態などにもよりますが、すべてのものを撤去する関係上、大掛かりな工事になりやすく、多くのコストがかかります。また、次に入居するテナントとしては、レイアウトを自由に設計できるメリットがある一方、内装や設備をすべてそろえる必要がるため、時間や費用が多くかかるデメリットがあります。

店舗売却する方法

店舗売却とは貸室を居抜きの状態で次のテナントへ引き渡すことをいいます。この場合、造作譲渡料という名目で内装や設備を売却できるメリットがあるほか、原状回復にかかる費用を抑えられます。

店舗売却をするためには、居抜きの状態で入居可能なテナントを見つける必要があります。また、売却する場合は物件の貸主の同意を得なければならず、テナントの判断で勝手には行えないので注意しましょう。

オフィスビルなどでは原状回復したうえでの退去が基本ですが、飲食店の場合は居抜きで退去するケースも珍しくありません。

店舗を居抜きで売却するメリット

店舗を居抜きで売却する場合のメリットを3つ紹介します。

原状回復費用がかからない

借りている部屋を退去する場合は原状回復するのが基本です。店舗の場合、スケルトン状態で貸し出すことが多いため、原状回復工事費が高くなりがちで、敷金などで収まらないケースも考えられます。

一方、居抜きで売却すれば原状回復にかかる費用はほとんど抑えられます。また、すべてのものを残すのではなく「床や壁、天井のみ」「厨房のみ」といったように、内装の一部を残す「一部居抜き」の物件もあります。この場合、残せる箇所が多いほどコストを圧縮できるでしょう。

造作譲渡料を得られる

造作譲渡料とは内装や設備を次のテナントへ引き渡すことで得られる収入です。すべてのものを売却することもできますが、必要なものは譲渡の対象から外すことも可能です。

何を売却して何を残すかは、基本的に売主側が決めることが出来ます。ただし、売却するものとしないものの種類を明確にしておかないと、後になって買主とトラブルになるケースが考えられるので、売却時には契約書に造作譲渡に関する項目を詳しく記載しておきましょう。

退去間近まで営業できる

テナントが貸室を退去する際は、退去日までに原状回復を実施しなければなりません。店舗の規模などにもよりますが、原状回復工事は数週間または数ヶ月程度の期間を要するため、店舗の営業は早い段階で止める必要があります。

一方、居抜き売却による退去の場合、原状回復の必要がなく、そのままの状態で引き渡せることから、退去日の間近まで営業することが可能です。少しでも店舗の売上を確保しておきたい方にとって良い方法といえるでしょう。

店舗を居抜きで売却するデメリット

売却が長期化する場合がある

居抜きで売却するには、居抜きの状態で入居してくれるテナントを見つけなければなりません。入居工事費を抑えられるなど多くのメリットがあるとはいえ、自由な設計ができない関係上、条件が合うテナントを見つけるのは容易ではありません。

そのため、売却先が決まるまでの時間が長期化してしまい、退去日が遅れる可能性があります。退去が遅れれば、その分の賃料は支払わければならないため、結果的にコスト増になるリスクも考えられます。

閉店計画を早目に知られる可能性がある

居抜きで売却をする場合、次のテナントを募集するため、ネット上に広告が掲載されるケースがあります。そのため、店舗の従業員がネット上から閉店の情報を知ってしまう可能性があります。

事前に店主の方から従業員に告知した後であれば問題ありませんが、告知の前に広告が掲載されると、早い段階で閉店することを知られてしまい、店主と従業員の信頼関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。

特に移転による閉店の場合、信頼関係の悪化により従業員が退職するようなことがあれば、移転後の計画に支障をきたす可能性も考えられます。

前店舗の評判が影響する

前店舗の評判が売却活動に悪い影響を及ぼすケースがあります。近年ではネット上で店舗の口コミが多く掲載されていますが「店の雰囲気が悪い」「内装が気に入らない」などの口コミがあると、買主側は居抜きでの入居を避けたいと考えるようになるでしょう。

反対に評判の良い口コミが多ければ、購入したいテナントが増える可能性もあります。そのため、閉店することが決まった後でも顧客の意見や評判は常に気にすることが大切です。

店舗売却にかかる費用                                   

以前は居抜き売却がそこまで一般的ではなかったこともあり高値で取引されることもありましたが、

現在では、居抜き物件での店舗購入を考える人が増えたこともあり、店舗の居抜き売却の相場は100万円~250万円程度と言われています。

できる限り売却益を残すために、売却にかかる様々な経費を理解しておく必要があります。

売却額だけではなく、経費を差し引いて最終的にどの程度収益が得られるのか、できるだけ正確に計算しておくことが大切です。

店舗売却にかかる費用内訳

店舗を売却するときはさまざまな経費が発生します。売却額だけではなく、経費を差し引いて最終的にどの程度収益が得られるのか、できるだけ正確に計算しておくことが大切です。

仲介手数料

不動産の売買では仲介した会社へ仲介手数料を支払う必要がありますが、店舗売却も同様に仲介手数料が発生します。

ただし、居抜きによる店舗売却の場合、宅地建物取引業法の対象にならないため、仲介手数料の制限がない点に注意してください。一般的には「30万円または売買金額の10%」としていますが、中には法外な手数料を要求する業者に当たる可能性もありますので、大体の相場は頭に入れておきましょう。

譲渡所得税などの税金

譲渡所得税とは不動産などの資産を譲渡して利益が出た場合に課せられる税金で、所得税や住民税に加算されます。

店舗売却の場合、内装や設備などを売却して得た利益は総合課税になり、給与所得などと合算して計算します。所得税は累進課税であり、所得が大きければ大きいほど税率が高くなるので、譲渡によってどの程度税率が上がるか、把握しておくことをおすすめします。

なお、土地や建物の場合は分離課税になり、給与所得などの所得とは別に計算され、税率も異なるため注意しましょう。

オーナーへの承諾料

物件オーナーと店舗運営者が異なる場合で、店舗運営者が備品や什器を売却して新しい借主を探す場合、物件オーナーの承諾を得る必要があります。その際、物件オーナーから承諾料を求められることもあります。

承諾料は法律によって定められているものではありませんが、慣行として行われているケースがあり、費用は話し合いによって決められます。一般的に譲渡代金の10%程度を目安と考えるとよいでしょう。

店舗を売却するときの注意点

店舗を居抜きで売却する場合の注意点デメリットを3つ解説します。居抜きによる売却では、さまざまな注意点がありますが、特に注意すべき2点を以下にまとめます。

契約によっては不可の場合がある

賃貸借契約書には退去時の原状回復に関する規定を記載するのが基本です。原状回復を定めた箇所に「貸主の承諾があればその限りではない」などの文言が入っていれば、居抜き状態での退去が認められる場合がありますが、そうした記載がない場合は、必ず原状回復しなければならないケースもあります。

ただし、もし記載がない場合でも物件オーナーの承諾を得られれば、居抜き売却が可能になります。その場合は後述する承諾料が必要になるケースもある点を理解しておきましょう。

リース物品を回収すること

リース期限が残っている物品や設備はそのまま売却できません。残債を払うなど契約書に方法が指定されているので事前に確認するようにしてください。場合によっては残代金を一括精算してリース品を撤去しなければならないため、その分の費用も見込んでおく必要があります。

また、リース物品を次のテナントへ引き継ぐケースもありますが、その場合はリース会社や次のテナントと契約内容をしっかりと確認するようにしましょう。

店舗を売却するときの流れ

店舗を居抜きで売却するときの手順を解説します。通常の退去と違いさまざまな手続きが加わりますので、居抜きでの売却を検討している方は、事前にチェックしておきましょう。

不動産仲介会社に連絡する

まずは不動産仲介会社に連絡することから始めます。不動産仲介会社からは、物件の住所のほか、退去の時期、希望の売却価格、リース物品の有無、設備のトラブルの有無などを尋ねられることが多いので、考えをまとめておく必要があります。

また、賃貸借契約書、物件の平面図のコピーなども用意しておくと良いでしょう。室内にある備品や什器はリース契約でないかの確認や、故障や不具合の有無を調べ、リストとしてまとめておくとスムーズに手続きが進みます。

物件の現地調査・査定

依頼をする不動産仲介会社が決まった後、居抜き物件の査定を行うために、店舗の内装や設備などの現地調査を行います。立地や面積は図面や賃貸借契約書などで確認できますが、現地を訪問することで内装や設備の状態や、店舗の雰囲気など書面上では判断がつかない細かい点が把握できるため、より正確な査定額を導き出せます。現地調査の際、もし売主しか分からない情報があれば、査定額に影響を与える場合があるため、できるだけ多くの情報を伝えるようにしてください。

実際に不動産仲介会社に査定を依頼するときは、事前に価格相場を調査しておくことをおすすめします。店舗の場合、戸建てやマンションなどと違い、相場を調べる方法は限定されてしまいますが、不動産ポータルサイトで類似した条件の物件を検索すれば、大体の相場が把握できる場合もあります。

なお、多くの不動産仲介会社は相談や査定を無料で行っているため、この段階で費用がかかることを心配する必要はないでしょう。そのため、複数の不動産仲介会社に査定を依頼して、比較検討することをおすすめします。

物件の売却活動

売却活動を依頼する不動産仲介会社が決まったら、媒介契約の締結後、売却活動が行われます。

媒介契約とは不動産の売買を依頼する不動産会社と売主の間で取り交わすもので、複数の不動産会社へ売却活動を依頼できる一般媒介契約と、1社のみに依頼する専任媒介契約、専属専任媒介契約があります。

3種類の媒介契約には、それぞれメリット・デメリットがあるため特徴を事前に理解したうえで判断することが大切です。

売却活動としては、レインズ(指定流通機構)への登録、宣伝・広告の作成、広告活動、内覧の実施などがあげられます。レインズは登録をすると不動産会社が物件検索できるようになるため、不動産業界に情報が広まり、スピーディーに買主を見つけられる可能性が高まるメリットがあります。

ただし、3種類の媒介契約のうち、一般媒介契約だけはレインズへの登録は任意となっているため、不動産仲介会社によっては登録を行わないケースがあることを理解しておきましょう。

買主と売買契約を結ぶ

売却活動により入居希望者が見つかった場合、売買契約を締結します。契約書など必要になる書面は仲介会社が用意しますが、売主側も改めて譲渡する内装や設備、備品、什器などの状態を確認するなど、契約締結に向けた準備を怠らないようにしましょう。

なお、物件オーナーと店舗運営者が異なる場合、店舗運営者と新しい借主との間で造作譲渡契約を締結する必要があります。物件の賃貸借契約はオーナーと新しい借主との間で締結しますが、造作物はあくまで元の店舗運営者のものであるため、取り交わす相手が異なります。

造作譲渡契約では記載事項を入念に確認することをおすすめします。特に譲渡するものとしないものの区分けや、注意事項などの記載を巡り、後になってトラブルに発展する可能性もあるので、不安な点があれば不動産仲介会社と相談するようにしてください。

引渡し

契約内容に双方が合意して、締結が完了すると、引き渡しに移ります。引渡しが完了した段階で、店舗売却の手続きは終了となります。

不動産仲介会社の選び方

不動産仲介会社の数は非常に多いため、どのような基準で選べば良いのか分からない方もいることでしょう。

仲介会社を探す際は、まずその会社の実績を確認するようにしましょう。店舗売却は通常の住宅の売却とは異なるノウハウが要求されるため、実績のない会社に依頼すると良い条件での売却が困難になるケースが考えられます。

また、仲介手数料がどの程度の水準にあるかの確認もするようにしましょう。詳しくは次の項で解説しますが、仲介手数料の割合は会社によって異なりますので、法外な手数料で契約しないように注意してください。

営業担当者の対応にも大きな違いがあるでしょう。良い営業担当者はレスポンスが早く、対応が丁寧です。

会社の対応は実際にやり取りをしなければわからない点が多いので、複数の会社から話を聞き、比較検討することをおすすめします。

まとめ

店舗売却はさまざまなステップを経て成立します。売却が完了するまでの流れはもちろん、事前準備や注意点などもしっかりと頭に入れておきましょう。

居抜きでの退去を考えている方は、まずは賃貸借契約の内容をチェックするようにしてください。また、実際に次のテナントへ物品などを引き渡す際は、トラブルの発生を引き渡すものとそうでないものの区別を明確にすることが大切です。テンポダスでは未公開の店舗賃貸物件を効率的に検索できるツールを提供しております。多数の居抜き物件を手軽に検索できるため、これから店舗売却を検討している方にとって費用相場や売却のイメージを掴む一助となるでしょう。無料の会員登録を行えば、店舗物件や商圏データの閲覧が可能になりますので、ぜひこの機会のご登録ください。