飲食店の開業にはいくら必要?資金の集め方・抑え方も解説

「飲食店を開業したいけど、初期費用がいくらかかるのか分からない」という方もいるでしょう。そんな方には、まずは開業する際に「何が必要となるのか」洗い出してみることをおすすめします。

本記事では飲食店の開業費用にかかるお金について、資金を集める方法や抑える方法まで解説いたします。これから開業を検討している方は、ぜひ一度ご確認ください。

※記載内容は2022年5月時点の情報です

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飲食店の開業に必要な資金

飲食店の開業に必要な費用は最低でも1,000万円ほどと言われています。もちろんエリアや業種業態によって、この費用はバラバラです。都市部になるほど物件取得費が高くなりますし、火力を使う中華料理屋や焼肉屋では排煙設備などの費用が高くなる傾向にあります。

しかし、初期費用の内訳はあまり変わりません。主に「物件取得費」「内装工事費」「調理機器費」「雑費」の4つです。それぞれについて、目安となる費用や詳細を解説いたします。

物件取得費

物件取得費の内訳は主に下記の通りです。

  • 保証金
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 前家賃

保証金

保証金とは、借主の「家賃滞納」「物件損傷」時の補填費用として充てられるお金のことです。目安金額としては賃料の3ヶ月〜10ヶ月分ほどを想定しておきましょう。契約終了後には残額が借主の手元に返金されます。

礼金

礼金は「謝礼」として貸主に支払うお金です。なかには0円の物件もありますが、多くの場合では請求されます。目安金額としては賃料の1ヶ月〜2ヶ月分ほどを想定しておきましょう。保証金や敷金とは異なり、契約終了時に返金されない点はご注意ください。 

仲介手数料

仲介手数料とは、不動産仲介業者に対して支払うお金です。目安金額としては賃料の1ヶ月分。それ以上の金額を請求することは法律で禁止されています。

前家賃

前家賃とは、物件契約時に支払う先々の家賃のことです。目安金額としては、初月と翌月分の家賃合算分。なかには翌々月分を足した3ヶ月分を請求されるケースもあります。

内装工事費

内装工事費には、壁や床の塗装、厨房機器の設置など、飲食店を運営するにあたって必要な準備資金が含まれます。

目安として、一般的な内装工事の費用は下記の通りです。

  • スケルトン物件(※1):平均30万~50万円/坪
  • 居抜き物件(※2):平均15万~30万円/坪

※1)内装や設備などが何もない状態の建物のこと
※2)前のテナントから内装や設備ごと引き継いだ物件のこと

もちろん、これは開業する業種業態によって異なります。たとえば中華料理屋や焼肉屋を開業する場合には、多数のコンロ数と排煙設備が必要となるため、より高い金額となるでしょう。

調理機器費

「オーブンレンジ」「フライパン」「鍋」など、調理にあたって必要となる機器はさまざま。提供する料理によっては寸胴鍋や大型炊飯器が必要になったりなど、費用が高くなる傾向にあります。想定される来店数に応じて必要な調理機器の数も異なりますが、一般的に数十万円は見積もっておくと良いでしょう。

雑費

飲食店を開業するためには店舗物件の中以外にもさまざまな費用が必要となります。

例)

  • 従業員の採用費用
  • 集客のプロモーション費用
  • 食品衛生責任者や防火管理者などの各種資格費用
  • トイレットペーパーなどの消耗品費用
  • 接客ユニフォームの費用

小さな出費でも積もれば山となります。あらかじめ支出が想定される項目を洗い出しておくと良いでしょう。

飲食店の開業資金を抑える方法

「できるだけ開業費用を安く抑えたい」という方もいるでしょう。そんな方におすすめの方法をご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

キッチンカーから始める

キッチンカーは物件取得費がかからないため、初期費用を安く抑えられます。車も中古であれば100万円代で購入することも可能です。車の維持費や駐車費も、家賃と比べれば安いのでランニングコストも低く抑えられるでしょう。

また、キッチンカーでは固定の立地がありません。移動式なのでオフィス街・大型ショッピングモール・イベント会場など、来店が期待できそうな場所で出店することができます。提供する料理や店主の人柄に魅力を感じてもらえば、固定のお客さんがつく可能性もあるでしょう。

補助金を活用する

補助金は国や各自治体から支給されるものです。基本的に返済は不要なケースが多く、特定の条件をクリアして審査に通過すれば支給されます。

たとえば東京都の「創業補助金」の条件は下記の通りです。

■創業補助金

  • 対象となる方:都内で創業を予定されている方または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方
  • 助成対象期間:交付決定日から6か月以上2年以下
  • 助成限度額:上限額300万円、下限額100万円
  • 助成率:助成対象と認められる経費の2/3以内
  • 助成対象経費:賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費

出典:東京都創業NET

また、日本商工会議所から支給される「小規模事業者持続化補助金」の条件は下記の通りです。

■小規模事業者持続化補助金

  • 対象となる方:商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいる「小規模事業者」及び、一定の要件を満たした特定非営利活動法人
  • 助成限度額:一般型50万円、低感染リスク型ビジネス枠100万円
  • 助成率:取組に使用した額の2/3以内
  • 助成対象経費:機械装置等費、広報費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費など

出典:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金メニュー

いずれの補助金も申請から支給まで一定の時間を要します。あらかじめスケジュールに余裕を持って申請してください。補助金を活用すれば賃借料などの初期費用を安く抑えられます。できるだけ活用して、開業にかかる負担を軽減しましょう。

居抜き物件を選ぶ

居抜き物件とは、前のテナントから内装や設備ごと取得する物件のことです。内装や設備の一切ないスケルトン物件と比較して、内装工事費を安く抑えられます。一般的にスケルトン物件の内装工事費は平均30万~50万円/坪と言われていますが、居抜き物件の内装工事費は平均15万~30万円/坪が相場です。

金額的に安く抑えられる点では魅力を感じられますが、一方で契約前にあらかじめ下記3つのポイントは把握しておきましょう。

①内装工事がしにくい

居抜き物件で大幅な内装工事をする場合、撤去費用が別途必要となります。そのため店舗コンセプトにこだわりがあり、独創的なデザインを実現したい場合にはスケルトン物件の取得も検討しましょう。

②設備や機器の故障リスクがある

前のテナントから引き継いだ設備や機器が、契約後すぐに故障してしまう可能性もあります。故障した際には撤去費用や修理費用が必要となるため、予期せぬ出費を防ぐためにも契約前に「老朽化していないか」は必ず確認しておきましょう。

③前のテナントの評判が残りやすい

前のテナントの評判が悪い場合には注意が必要です。「周辺住民との間でトラブルがあった」「かつて大きな事故や事件があった」など、地元周辺で悪い噂が立っていないか、不動産仲介会社に問い合わせてみることをおすすめします。

居抜き物件を探す方法は、主に「インターネットサイトを確認する」「不動産仲介会社に問い合わせる」「現地調査で探す」の3つです。居抜き物件はなかなか市場に出回っていないため、全ての方法にアンテナを貼って探す必要があります。とくにTempodasのような居抜き物件の専門仲介サイトを活用してみましょう。20,000件以上の物件情報や、店舗周辺の情報について取得することが可能です。利用料金は一切かからず無料で登録できるため、ぜひ活用してみてください。

フリーレント契約や家賃交渉をする

物件を取得する際には前家賃が必要となります。物件契約時に1ヶ月〜3ヶ月ほど必要となるため、初期費用を抑えたい場合には「フリーレント契約」のある物件を選びましょう。また、家賃そのものを低くできるよう交渉することもおすすめです。

内装工事は自分で行う

先述した通り、内装工事費は15万〜50万円/坪かかります。そのため自分で内装工事を行うこともおすすめです。壁や床の塗布、机や椅子の作成など、店舗の大きさにもよりますがDIYは非現実的な方法ではありません。素人が工事することで、手作り感のある仕上がりになるため、SNSで評判を集める可能性もあります。

中古品やリース契約を検討する

調理機器を用意する際に新品ではなく、中古品を用意することもおすすめです。冷蔵庫や食器棚などはお客さんからも見えないため、中古品で揃えても何も心配はありません。また、リース品やレンタル品で購入することで、新品に近い状態の機器を毎月定額で利用することができます。

従業員を雇わない

開業当初は、店主もしくは家族のみで運営することも視野に入れましょう。アルバイトや社員などを雇えばもちろん接客は楽になりますが、採用するには求人広告に出稿する必要もあります。とくに開業初期は費用がかさむので、従業員を雇わないという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。

SNSを活用して集客する

開店時にはプロモーション費用が必要です。たとえば看板の設置やチラシの配布、飲食店ポータルサイトへの掲載など、集客するにも費用はかかります。しかし、SNSを活用してフォロワーを増やせば、無料で認知を広げられる可能性もあるでしょう。開店前からTwitterやInstagramを通して、お店の情報をコツコツと発信してみてください。

開業資金を抑えるには「小さな店舗」もおすすめ 

開業費用を抑えたい場合には、10坪未満のカウンターテーブルの店舗もおすすめです。

物件の初期費用や工事費用が安い

物件面積が小さければ、その分だけ店舗取得にかかる初期費用や工事費用が安く抑えられます。また、必要となる机や椅子も少なく済むため内装工事費用も抑えられるでしょう。「飲食店を開業したいけど、どうしても大きな資金は用意できない」という方は、小さな店舗なら開業できるかもしれません。

ランニングコストも安く抑えられる

面積が小さい分だけ家賃を低く抑えられます。また、同時に接客をする(料理を提供する)お客さんの数も少ないため、従業員を雇わずに店舗を運営することが可能です。固定費を抑えたうえで、開店数を増やす(もしくは顧客単価を上げる)などすれば高い利益率を実現できるでしょう。

お客さんと距離を近づけられる

店舗面積が小さければ、店主とお客さんの距離感が縮まります。とくにカウンターテーブルのお店では接客をしながらコミュニケーションを取ることもできるでしょう。お客さんのリピート率が高まれば安定した売上を維持できますし、新規の集客をかけるプロモーション費も抑えることができるはずです。

飲食店の開業資金を集める方法

飲食店の開業資金を集めるには、主に「貯金」「借金」「融資」「クラウドファンディング」などの方法があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説いたしますので、参考にしてください。

貯金する

開業費用を集めるには「貯金」を選択肢として取る人が多いでしょう。リスクもありませんし、コツコツ安定して貯めることで確実に開業費用を集めることができます。しかし、一般的なサラリーマンの収入では貯金するまでに時間がかかる点がデメリットです。また、貯金が苦手な方には向かない方法となります。もし貯金が苦手な場合は、毎月の収入のうち一定金額を別の口座に送金するなど、仕組みから整えておくと良いでしょう。

親族や知人から借りる

親族や知人に頼んで借りる方法もあります。飲食店を開業することが夢であることを伝えれば、貸してくれる人も出てくると思いますし、返済の義務なく提供してくれる人もいるでしょう。しかし、いくら近い関係性でも借りる場合には「返済義務」「利子率」「返済期間」などは書類にまとめておくことをおすすめします。また、仮に返済が滞ったり、そもそも返済できなかった場合には関係性が崩壊する可能性もあるため注意が必要です。

銀行から融資を受ける

開業資金を集める一般的な方法のひとつが、銀行から融資を受けることです。しかし地方銀行や信用金庫では経営実績がないと融資をもらえないケースが多いため、新たに開業する場合は「日本政策金融公庫」という政府系金融機関から融資を受けることをおすすめします。融資を受けるためには創業計画書の作成が必要ですが、電話や支店で相談に乗ってもらえるため、まずは気軽にお問い合わせしてみましょう。

クラウドファンディングで集める

クラウドファンディングとは、実行者が自分のアイディアを実現するために支援者を募るサービスです。開業資金を集める一般的な方法ではありませんが、開業への想いが強かったり、店舗のコンセプトが独創的であれば多くの支援金を集められるでしょう。

飲食店の開業資金に関する注意点

飲食店を開業する際には、資金に関して下記2つの点に注意してください。

資金を使うべきところ・抑えるべきところを明確にする

お店作りに妥協しないことは気持ちとしては重要ですが、実際は支出を抑えなければ難しいというのが現実です。たとえばお店の雰囲気作りに力を入れたい場合は、内装デザインにお金をかける代わりに、家賃の安い駅から離れた物件を契約する、集客費用を抑えてSNSで情報発信をするなどして、うまく資金を工面しましょう。

売上が軌道に乗るまでの生活費も確保しておく

開業時に必要なのは初期費用だけではありません。売上が軌道に乗るまでの生活費など、少なくとも3ヶ月分ほどは確保しておくことが重要です。当初想定していたよりもお客さんが来ない場合、2〜3ヶ月ほどあれば巻き返すことも難しくありませんが、初月でキャッシュが尽きてしまえば元も子もありません。あらかじめ後々のことを考えて、貯金しておくことをおすすめします。

必要な資金を把握したうえで開業を進めよう

飲食店を開業する際には「物件取得費」「内装工事費」「調理機器費」など、さまざまな費用が必要となります。また、売上が軌道に乗るまでの生活資金も欠かせません。しかし、その資金額は莫大で、一般的なサラリーマンでは用意するのに数十年ほどかかってしまうでしょう。そのため補助金や居抜き物件を活用したり、リース品やレンタル品を購入したりなどして、できるだけ初期費用を抑える取り組みが必要です。まずは「開業費用がいくらかかるのか」見積もりをしたうえで、抑えられる出費は抑えて、開業準備に取り組んでみてください。